ペンギン先生の実践

幸せへの鍵~子どもと温かな関係を築く7つの習慣~

言葉がけを変える

先日わたしに、「ヒントをもらいたくなるくらい、(子どもへの)言葉がけが嫌になることがある」ということを打ち明けてくださった方がいました。きっと以前のわたしのように、目の前の子どもへの関わり方を今、模索しているのだと思いました。

わたしにも、学級崩壊したクラスを引き継いで小学校4年生を担任した頃、「この人こそは!」と相談してヒントをいただいたり、本を読んで目の前の子ども達への関わり方を試行錯誤する時期がありました。藁(わら)にもすがる思いとはこの頃のわたしの心境です。その頃、育児書「子どもが育つお母さんの言葉がけ(汐見稔幸著)」を読み、子ども心への理解の浅さや人としての未熟さに気づいて悶絶(もんぜつ)し、「子ども達よ、ごめん、本当にごめんなさい」と猛反省したこともありました。

実際に本に書かれてある言葉がけを試みてみると、何ともいえない気持ち悪さがモアモア~っと繰り返し心の中に現れてきました。習慣を変えることへの気持ち悪さです。習慣(物の見方・捉え方→感情→行動など無自覚な反応)によって負のスパイラルに陥り、目の前の現実が不本意であっても、習慣をなかなか変えようとしないのは、この気持ち悪さが嫌だったり、意志の力や決断力を必要としたりするからかもしれません。しかし、当時のわたしは相当切羽詰まっていたので、意図的に時間を設定して、意志の力を使って試みることを自分に課しました。

言葉がけを変えて子ども達と関わると、わたしの横でお話しをしながら泣き出す子ども達が頻繁に現れ始めました。そして、クラスの中にいたある子どもの存在に気づいたのです。「学校だけが安心する」子どもの存在です。泣きながら話をする彼女の声を聴いて、その背景を理解した時に、「温かな家族のようなクラスにしたい」という想いがわいてきました。この想いはさまざまな困難を乗りこえる「北極星」となりました。わたしのようにヘナチョコ・泣き虫であっても、心の中の「北極星」が定まったら、その方向・そのイメージに向かって一歩一歩進むことができます。

学級崩壊のクラスでの子ども達の関係

「なぜ学級崩壊するのですか。」

わたしは、時々聞かれるこの質問に今に至るまで明確に答えることができません。ただ、「学力が足りない」「我慢が足りない」「自己中心的で思いやりが足りない」「規範やルールが身についていない」など、いつも「〇〇がない」との見方を周りの大人からされた子どもたちの心は、自己否定や無気力に蝕まれていました。「〇〇だから出来ない」と「出来ない」原因を引き継ぎで前担任や先生同士の会話でよくされていたことも気になりました。「問題」行動を、怒鳴られる・教室から出される・叩かれるなどの罰で対応されてきた子どもの中には、大人の姿を真似して意見の食い違いや気に入らないことがあると、嫌な思いを友だちにさせることで自分の思う通りにしようとする行為がみられました。そしてすぐに周りを巻き込んだケンカになりました。わたしは、これら一連の出来事を「負のスパイラル」だと捉えていましたが、何をきっかけにしたら「正のスパイラル」になるのかが分からずに困っていました。

そして、学級崩壊したクラスでは、教師と子どもの関係も、子ども同士の関係も冷ややかで、心の「つながり」が感じられませんでした。何年もの時間を共に過ごしているのに、同じ空間にいるのにそれぞれがバラバラで孤立している状況にとまどいました。

温かな関係を築く7つの習慣

ある日、いつも友だちと激しいケンカになる子が、「仲良くしたいのに、できないんだ!」とわたしに訴えたのです。わたしは、「仲良くするって何だろう」、「仲良くしたい」という子どもの想いを叶えるのに、「わたしは何ができるのだろう」と模索している頃に見つけ出したのが、こちらの「選択理論」です。

選択理論心理学を考えたのは、アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサー博士です。「精神科医として40年間の経験を通して、不幸な人は全て同じ問題をかかえているということが明らかになった。仲良くしたいと思っている人と仲良くできないのだ。」という記述に、「これだ!」と膝を打ちました。そして570ページに及ぶ内容を、どう学校現場の日常に落とし込むのか、思案している時に見つけたのがこちらの本です。

わたしは、こちらの本を参考に、子ども達に「ふわふわとチクチク」という授業をしました。

こちらは、人との意見が食い違ったときに、「自分は正しくて、相手が間違っている」と考え、相手を外側から変えようとする関わり方です。教師と生徒だけでなく、親子、夫婦、カップル、兄弟姉妹などあらゆる人間関係において外的コントロールはあります。これらの7つの方法を「選択理論心理学」では、「人間関係を壊す7つの習慣(7つの致命的習慣)」とよび、この習慣を使い続けると、人間関係が壊れる上に、叶えたい望みからも遠ざかるとされています。

一方こちらは、「人はそれぞれ違う上質世界(願望)」をもっており、互いのもっている上質世界をじっくりと聞き、自分のもっている上質世界を和やかな雰囲気で対話によって交渉を重ねることで、互いの程よいところで折り合いをつけていきます。大人と子どもの関係においても対話によってどうするかを決めます。

「大切な人との人間関係がよければ、抱えている問題の種類が情緒的問題、依存症、暴力、虐待、犯罪などどんな問題であっても予防できたであろう」とグラッサー博士は述べています。

わたしは、「どんな問題であっても予防できたであろう」については本当かどうか確かめてはいませんが、人には5つの基本的欲求があって「愛・所属」の欲求が満たされていないと、人は人間関係をあきらめ、破壊的な「力」の満たし方をすることがあるという指摘には、4月当初ケンカばかりしていた子ども達の姿と重なり納得しました。

子どもたちの関係は著しく変化しました。心の繋がりができた子どもたち同士が支え合い助け合う温かな関係の中で、学力も向上しました。(例:算数の思考、平均69点→92点)。ケンカでストップしていた授業が、子どもたちが先生役をして授業を展開するようになっていました。

幸せな人生を生きる心の支え

「ふわふわとチクチク」の授業後に女の子がやってきました。

「先生、わたし気づいたことがあるよ」

「なになに?」

「ふわふわ(人間関係を築く7つの習慣)だと『天才のたね』が成長して、

チクチク(人間関係を壊す7つの習慣)だと(天才のたねが)しおれちゃうね」

そして、絵が得意だった彼女は、こちらの絵をとても楽しそうに描いてくれました。

チクチクの矢印が上に一本向いているのは、「ふわふわがあって、チクチクが少しあるなら成長する」というのが彼女の言い分でした。

人生にはいろんな困難があります。

1人でいいから誰かと温かな関係が築けたら、独りぼっちになりさえしなければ、困難にあってもきっと乗り越えていく、幸せな人生を生きる心の支えにきっとなります。

学級崩壊したクラスの中で心の「つながり」が感じられない冷たい関係から、互いに支え合い助け合う温かな関係を築いていった子ども達と幸せな日々を過ごしたからこそ、わたしはそう思うのです。

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ABOUT ME
ペンギン先生
ペンギン先生 愛知県在住。元小学校教員。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

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