子ども達との物語

ごめんなさいの代わりに~国語教室でのひとこま~

本日は、国語教室の日。

子ども達と一緒にいると、いろんな出来事が展開していきます。

今から書くのは、国語教室の中でおきた、ほんのほんのひとこまです。

「りんごかもしれない(ヨシタケシンスケ著)」の絵本を持参した男の子(10歳)は、「こんなのがあるわけない!っていう想像力の広いところが、ヨシタケシンスケの好きなところ」と言って、「ここが面白いところだよ」とわたしにお話しをしていた後でのこと、、

その本を借りた彼のお友だちが、彼の持参したお気に入りの本に薄く鉛筆で線を書き、消すということをしました。どうも、何かを伝えた時に、私たちが聞きのがしていたことが気に入らなかったみたいです。

お気に入りの本を持参した彼は、仲の良い友だちがしたことを見てうなだれ、そして、立ち上がり、カーテンと窓の間に入り、窓を見つめて皆からは背を向けていました。

そして、ガラスをドンドンと2回ほど叩きました。丁度、その時訪れた方に、「ガラスは叩かないで。割れるとケガをするといけないから」と気をつけるように促されました。すると、彼は叩くのをやめ、そのまま再び窓の方を向いていました。

その後、部屋の外に出て、扉を開いたり閉めたりしていました。

薄く鉛筆で線を書き、消すということをした男の子に、わたしは何と言葉をかけようかなと思いました。聞いてほしい、見てほしい、、そのタイミングで反応がないと寂しさを強く感じて拗ねたり落ち込んだりすることがある子のように思えました。そこで、扉を開いたり閉めたりしている彼の名前を出して

「お友達が元気になるには、どうしたらいいかな」

と聞いてみました。すると

「怪獣が好きだから、怪獣の絵を描いたらいいと思う」

と言いました。

わたしは、6㎝四方の付箋に怪獣の絵を描き始めました。もう一人、「わたしも怪獣の絵を描く」と言って描き始めました。

「怪獣が好きだから、怪獣の絵を描いたらいいと思う」と言った男の子も怪獣の絵を描き始めました。とても真剣な眼差しでした。

3枚の怪獣の絵を絵本の表紙に貼った頃、彼は部屋の中に戻ってきました。そして、再び窓ガラスに向かって立っていました。

わたしは、彼の横にソッと立って「どうしたい」と話しかけに行きました。すると

「ぼくは一人でいたい」

と応えました。そこで、

「いつまで?」

と聞き、彼が言った時間まで待ちました。

「時間がきたよ」

と合図をすると、彼は自分の席に戻り、絵本に貼られた怪獣の絵をじっと見つめていました。そして、友だちの描いた怪獣の絵の付箋に、太い字でとても丁寧に

「ありがとう」

と書き、友だちに渡したのでした。

本日の国語教室は、絵本「ぺんぎんたいそう」のラップ創作あり、朗読のお店屋さんごっこあり、「ぼくをさがして」の哲学的な対話あり、、いろんな出来事が展開した中の

ほんのひとこまからのお話しです。

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ペンギン先生
ペンギン先生 愛知県在住。元小学校教員。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

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