心と対話と物語

生きているってことは、奇跡。

お友だちから「退院したらおしゃべりしたい」とメッセージがきました。「がんのステージ4」の診断を受け、手術を2回し、3日前に「経過観察」となったお友だちです。

昨年の春、彼女が診断名を告げられ、わたしに打ち明けてくれた時、わたしは彼女から家族への悲痛な想いを感じとり、「日常こそが尊くて、日常こそが愛おしい」が生まれました。このブログは彼女とわたしの共作のようなものです。

久しぶりのおしゃべりでした。

診断名を告げられた日のこと、術後になかなか回復しなかったこと、その瞬間、その瞬間に味わった感情、そして何も感じられない、何もしたくない無感覚になったこともあった10ヶ月の日々を彼女は語り、わたしは聴きました。意志の力でもって気丈にイメージを保ち続けた彼女も、経過観察となりホッとしたのでしょうか。心の奥底にある葛藤を見つめ始めていました。

「もうこれ以上は抱えきれない、、でも諦めることもできない、、、」

いろんな感情が混じり合った混沌としたものが、わたしの想像の及びもつかない葛藤が彼女の中から湧き上がっていました。

「本もたくさん読んだし情報も集めたし、、、でもその分野を極めた人の書いたことはとても理解できなくて、分からない中で、治療を選択することが怖かった、、本当に怖かった、、、、1つの治療を選ぶことは、他の治療を捨てるということ、他の可能性を捨てること、それが本当に怖かった、、それでもやっと選択した治療を否定されることもあって、、それにわたしは傷ついた、、、だけど、わたしは誰も傷つけたくないから言えなかった、、、」

彼女がそうつぶやきました。

そうだったんだな。命がけの選択を真剣に積み重ねて、彼女は今、生きている。生きていること、、、これ以上の奇跡はないなと感じました。

彼女とわたしは住む場所が離れていて、会うのも1年に1度あるかないかで、こういったおしゃべりも、どうでしょうか、、、、お互いの人生の要所、要所でする程度です。それなのにいつも心は繋がっていて、影響しあっている不思議な縁(えにし)の友だちです。

2019年9月1日 彼女の1回目の手術の日

中務貴史監督・岩崎靖子監督ドキュメンタリー映画 
「愛でいけるやん~宮田運輸のひらく道~」

1日をどう過ごそうかと思ったわたしは、彼女がずっと続けていた合唱を、「彼女の代わりにやろう!」とふと思いたち、プロのオーケストラとその日集まった100人の人達でドキュメンタリー映画「愛でいけるやん~宮田運輸のひらく道~」の主題歌を録音するイベントに参加しました。呼吸の音でさえ大きく聞こえるような静まりかえった空間で、指揮者がタクトを振り、最初の一音が流れた時の音の響きがあまりにも美しくて感涙しました。

後に、この瞬間に感じた音の美しさ、響きの素晴らしさを彼女に伝えたことが、12月25日あのサントリーホールでの合唱に彼女が参加する後押しとなりました。

2019年12月25日

世界一の響きを目指して創られたサントリーホール
写真はフューチャリストNLPよりお借りしました。

2回目の手術を控えた彼女は、龍村仁監督ドキュメンタリー映画「地球交響曲第9番」の撮影を兼ねたベートーヴェン交響曲第9番のコンサートの舞台に立ちました。その素晴らしさ。それはまるで

”There are only two ways to live your life. One is as though nothing is a miracle. The other is as though everything is a miracle.”

                     Albert Einstein  

-人生には、二つの道しかない。一つは、奇跡などまったく存在しないかのように生きること。もう一つは、すべてが奇跡であるかのように生きることだ。-

全ての瞬間が奇跡のようでした。

彼女は、この素晴らしい舞台に立つという幸運を、彼女の親友にも分かち合いました。親友が練習や本番の舞台でいきいきと輝いている姿に触れてとても嬉しかったと言っていました。親友の喜びを自分の喜びと感じて語る彼女の姿は、友だちが笑顔になったことを喜ぶ心に境界線のない子ども達みたいでした。

わたしは彼女の話を聴きながら、以前、離任式で子ども達にお話ししたことを思い出しました。

「お友達が困っていたら、だれかが泣いていたら、自分がどんな辛い時にでも優しくできる。手助けできる。そんな優しさと思いやり生まれ持って心の中にあるということを、あなたたちを通して教えてもらいました。」(子ども達との約束より

わたしは子ども達を通して感じていたことを、彼女からも感じました。なぜなら彼女は体も心も痛く苦しく、そして、怖くて仕方がない時にも、親友への思いやりを忘れることはなかったからです。愛を感じながら、怖れを感じることはできません。親友に思いやりを示しているとき、親友の喜びを自分のことのように感じているとき、彼女はきっと愛に包まれていたと思います。

今日の彼女は昨日のように、もしかしたらパジャマでベッドに横たわっていて、以前できたことが今は中々できないことに不甲斐なさも感じながら、過ごしているかもしれません。

命あることが尊いです。どうぞゆっくりと過ごしてください。

彼女とのおしゃべりの直後に、友人から写真が送られてきました。いつも抜群のタイミングで送ってくるのです。

秋田の延命地蔵さま

昔の人達は、今のような治療方法がないなか、荒ぶる感情を鎮めながら免疫力を高め命を繋げる知恵として祈っていたのかなと思いました。

生きていることに、ありがとう。

  そして

生きているってことは、奇跡。

Photo by Emmy
ABOUT ME
ペンギン先生
ペンギン先生(たかはし あやお) 愛知県在住。元小学校教員。講師。(近い未来)作家。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

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