暴力をしたり暴言を吐いたりする子ども

暴力をしたり暴言を吐いたりする子どもに出会った時に

ご質問をいただきました

クラスに、席に座れなかったり、私に対して死ね!オマエ!俺は死ぬ!を連呼したり、友達の邪魔をしたりする子がいます。ほかの先生には言いません。他の先生たちの様子を伺いながら、私にだけ暴言を吐いてきます。ペンギン先生は暴言を吐かれたり、蹴られたりしたことはありますか?どう関わったらいいか、迷走中です。

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人生は、真っ白いノートに字や絵を描くようなものです。あなたの人生の1ページに学校があって、そこで、暴れたり暴言を吐いたりする子どもと出逢いました。今のあなたは、何をしたらいいのか、どう理解したらいいのか分からずとても困っています。だけど、未来のあなたは今のあなたとは異なります。未来のあなたが、今のあなたの人生のノートの1ページに字や絵を描くとしたら、どんな字や絵を描いていると思いますか。イメージを描いてみてください。そして、描いたイメージに向かって、行動を選択し、前に進む力があなたにはあるのです。

ご質問にお答えします

ご質問に対して、「飛び出し君」の事例を参考に、以下、4つの視点からお答えします。

視点① 自分と自分の関係性

視点② 自分と「飛び出し君」の関係性

視点③ 「飛び出し君」と教室全体の関係性

視点④ 「飛び出し君」と学校全体の関係性

視点① 自分と自分の関係性

最大限「意志力」を発揮する自分に整えます。

 ・「飛び出し君」に対して、ストレスを感じていることを認めます。

 ・呼吸をゆっくりにします。

 ・何を大切にしているかを意識します。

生死に関わる危険ではなく、大事な価値観や目標から離れてしまいそうな危機への対応です。

参考文献:

「最高の自分を引き出す法 スタンフォードの奇跡の教室 ケリー・マクゴニカル著」

第1章 「難しいこと」を実行する力をつける

第2章 「めげない人」の体で起きていること

第3章 意志力を「筋肉」のように鍛える秘訣

第4章 あなたは「ミラーニューロン」に動かされている

第5章 わたしがいちばん使っている方法

第6章 日本のみなさんの疑問に答えます

第1章で、ケリーは「『意志力』には3つの力(やる力・やらない力・望む力)があり、大きな視野で物事を見て、長期的な目標を見失わずに、たとえ困難があっても、こうしておいてよかったと後から思えるようなことをするための力」と定義しています。うまくやれるかどうか自信のないこと、不安や心配を感じることに挑戦するときに「意志力」が必要になります。

「第2章 『めげない人』の体で起きていることに」を読むと「意志力」を発揮できる状態、できない状態についての理解が深まります。「スタンフォードの自分を変える教室」にも書かれている内容で、ケリー自身が最も驚いた研究です。

「意志力」を発揮できるかどうかというのは、「意志力」をもっている人ともっていない人がいるというような性質でもなければ、美徳でもなく、脳と体で起こる生理学的な状態によるという科学的な洞察です。人間の脳と体は困難に直面したとき、ふたつの反応(A or B)のどちらかをします。

A:ストレス→逃走・闘争反応



ストレスを感じると、

・心臓の鼓動が激しくなる

・呼吸も荒く速くなる

・冷や汗がでる  

など、脳と体の反応により

・ストレスホルモン(アドレナリンやコルチゾン)が放出される

・意志力を司る前頭前皮質の活動を停止

すると、

脳と体は、戦うか逃げるかのストレス反応の状態になり、意志力(やる力・やらない力・望む力)を発揮できなくなります。

Bストレス→意志力を発揮し挑戦する

ストレスを感じても、「意志力」を発揮し挑戦することができる人がいます。その時の脳と体の生理学的な状態として、「休止・計画反応」がおこっています。

・心拍数が下がる

・呼吸は遅くなる

・前頭前皮質にエネルギーが集まる

すると、意志力(やる力・やらない力・望む力)を発揮できる状態になります。この脳と体の状態にもっていくために具体的にとり組んだことは

・呼吸の速さからストレスを感じている瞬間を自覚する

ゆっくりと呼吸をして、体と脳を「休止・計画反応」の状態にする 

エピソード

崩壊したクラスを再生するとき、「マンボウ作戦」をひらめきました。ケンカばかりする子ども達のトゲトゲ感情に巻き込まれないように、広大な海をゆっくりと泳ぐマンボウをイメージして、マンボウになったつもりでゆったりと教室を歩き、ゆったりと子どもに関わることで、ストレス反応からの対応をやらないということを心がけました。ストレス反応(闘争・逃走反応)から子どもに対応しても、なーーーーーーーーーんにもいいことは起きませんから。マンボウ、マンボウと心の中で唱えた、わたしの修行僧時代です。

視点② 「飛び出し君」と自分の関係性

 「飛び出し君」が教室に適応するための段階を階段にし、目標を「飛び出し君」、わたし、「飛び出し君」に関わる人達と共有しました。

・とり組まない(無気力・無能力)

・暴力(復讐する)

・反抗する、暴言を吐く(権力争い)

・いたずら(注目・関心) 

・何かできたよ、見て、見て 

 「飛び出し君」の実態は、学習においては「無気力」、態度において「暴力」でした。そこから一段ずつ階段を上がるように目標を「飛び出し君」と話し合って決めます。最初の目標は「友だちに暴力をしない」からスタートでした。 「飛び出し君」が暴言を吐いた時に、この階段をイメージして、例えば、普段暴力をしていた場面で暴言だけであったら、「暴言を注意する」のではなく、「しなかったこと」すなわち「暴力をしなかったこと」を認めるという方法をとりました。いつも暴力をしていた場面で何をしたらコントロールできたのかを「飛び出し君」に聞いて明確にし、「飛び出し君」に自覚を促して再発を防ぐのです。自分で自分の支援ができる場面をこつこつと増やしていきます。また、できないことはできないと自覚を促して、周りに伝えられるようになることも促していきます。

参考文献

「学級担任のためのアドラー心理学 岩井俊憲著」

「飛び出し君」の対応策の根拠として選んだのがアドラー心理学の「子どもの不適切な行動4つの目標」です。

子どもには2つの基本的な欲求があるという前提で子どもに関わっていきます。

・集団の中で居場所を確保したい

・大切な存在であると認められたい

子どもは無視・無関心が一番辛いのです。注目されるために不適切な行動をとることが多々あります。子どもの基本的な欲求が満たされないときには、子どもは、「いたずら→反抗(暴言)→暴力→とり組まない」という不適切な行動をとるようになります。その行動の奥には、注目・関心を集めたい→大人と権力争いをしたい→復讐したい→何もしたくない(諦め)という気持ちが隠されています。注目・関心を集めたくて子どもがするいたずらに、大人がイライラとして力で押さえ込もうとすると、子どもとの関係性が悪化します。すると、子どもは大人に対して反抗的な態度をとるようになります。それをまた、力で押さえ込むと、子どもは大人に復讐をするために暴力をふります。この時点では、第三者の介入が必要となります。当事者だけで解決をしようとせずに、誰かに調整してもらう必要があります。

子どもが暴力をしたり、無気力になったりと関係性が悪化してからの回復には、相当なエネルギーと時間がかかります。授業をして、学校内外の役も担って、個の対応もして、家庭もあっての日々の中では「飛び出し君」に費やすことのできるエネルギーと時間には限りがあります。限りある時間とエネルギーの中で最大限にエコ・エネルギー対応したいわたしとしては、予防策として何ができるかを問うと、ひらめきました!

それが!

「力で押さえ込む」ことをしない、イライラに反応して子どもに何かを強いることをしないということです。

「する」のではなく、「やめる」選択です。

「飛び出し君」のような子どもは、大人を試す行動をいろいろとやってきます。どこまでその大人が自分のことを受け入れるのかを測っているかのようです。神経を逆なですることが抜群に上手い「飛び出し君」を目の前に、最大限に意志力を発揮し、イライラとした時に反応することを「やめる」のです。ひと呼吸おいて自分の心を落ち着ける、マンボウ作戦を経てもなお、トゲトゲをまき散らす「飛び出し君」へ落ち着いて対応することは、これまた結構な修行でした。

エピソード

わたしも、ほぼ初めましての「飛び出し君」に暴言を吐かれたり、蹴られたりしました。最初、「わたしのことが嫌いなのかな」と悲しい気持ちになりましたが、その時に「本当だろうか?」と自分に問うと、捉え方が違うなと気づきました。先のストレス反応(闘争・逃走反応)についての知識がわたしにあったからです。暴れたり、暴言を吐いたりする「飛び出し君」を目の前にして、スタンフォード大の心理学者ケリー・マクゴニカル著の本の一節を思い出し、「飛び出し君」の問題行動の背景には、もしかしたら今までの彼の経験から「大人が怖くてたまらない」という気持ちが隠されているのではないだろうかと捉えたのです。「飛び出し君」を「大人が怖くてたまらない子ども」と捉えた時に、「先ず、『飛び出し君』が安心する関わり方って何だろう?」を問いとして、対応を模索する日々が始まりました。正解なんて分からない、やってみないと分からない、試みて「飛び出し君」の反応をじっと観察して、どの対応なら「飛び出し君」が落ち着くのかを探っていく日々でした。実際、「飛び出し君」が安心したら、行動が落ち着くかも?という仮説が本当にそうだったのだと確信がもてたのは、半年後に「飛び出し君」とひなたぼっこをしていた時のことでした。一緒にひなたぼっこをしていた「飛び出し君」に「友だちを叩いたり、蹴ったりしていた暴力をこの学校ではやらなかったね。どうして我慢ができたの。」と聞いたら、「前は友だちが全然いなくて不安だった。今は、いろいろ周りが構ってくれる。安心するから我慢が出来るんだ。」と、「飛び出し君」は答えました。この言葉を「飛び出し君」から聞いて初めて、わたしのとった対応が「飛び出し君」には適していたのだということが分かりました。もしわたしが周りの先生と同じように、アメとムチで対応していたら、「飛び出し君」とひなたぼっこをしながら「飛び出し君」の本音が聞ける関係性は築けず、「飛び出し君」とは戦闘態勢に入っていたことでしょう。

うまくやれるかどうか自信のないこと、不安や心配を感じることへの挑戦でした。その間は、「これ以上は我慢できな~~~~~い!!!」とぶち切れたことも何回かあります。その時には、窓を開けて、「がまんできな~~~~い」と叫んだり、紙にぐるぐるまるを描いて投げ捨てたり、怒りロケット噴射5秒前5,4,3,2,1,と心の中でイメージしてエンタメ化したり、机につっぷしたり、心ポケット爆発と絵にしたりして、イライラとした時にイライラした怒りを子どもにぶつけ返すことをしないよう工夫しました

関連記事:「飛び出し君」とひなたぼっこ

視点③ 「飛び出し君」と教室全体の関係性

「飛び出し君」には週に2時間、教室に居られるかどうかが分からないという実態がありました。その「飛び出し君」が最初からずっと席に座るというのはハードルが高い課題です。かといって、授業妨害は困ります。周りの子ども達の授業もしつつ、「飛び出し君」の居場所も作るには、、、、そこで、ひらめきました!一緒に授業に参加できるときには「頑張り席」、できない時には「落ち着きたい席」の2つを用意しました。「落ち着きたい席」は、子ども達の視界になるべく入らない一番後ろの席にして、「飛び出し君」がそこに座って折り紙をしたり絵を描いたりして気持ちを落ち着ける場とし、支援員の方に側についていただきました。「飛び出し君」の最初の班は、子どもチームを作り、複数で対応しました。「飛び出し君」は教室が自分の居場所だと感じられないから教室を飛び出していくのです。だけど、実際に彼はどこにも居場所がない子でした。そこで、教室の中に居場所を作るために

・「飛び出し君」に優しくできる子は誰か

・「飛び出し君」に優しくできる子を応援できる子はだれか

・「飛びだし君」に穏やかに接することのできる子はだれか

と、「飛び出し君」の近くに「飛び出し君」と関係性が築けそうな子ども達を配置し、「飛び出し君」を刺激しケンカをしそうな子どもの席を離しました。「何か困った時に、先生に助けて!とすぐに言いたいから、先生の近くの席がいい」というのが子どもチームからのお願いでした。この子どもチームがわたしの最も心強い味方でした。

関連記事:「飛び出し君」と子ども達のきらめくいのち~まあるくなあれ、環になあれ~

視点④ 「飛び出し君」と学校全体の関係性


自分でできる範囲を明らかにして、一人で抱えず職員室の先生達に頼みます。

・学校全体で「飛び出し君」対策を行う

エピソード

転校をしてくる「飛び出し君」の実態を把握した後で、わたしが最初にしたことは「飛び出し君」が教室を飛び出していった際にもクラスの子ども達への授業が続けられる体制を作るために、職員室にいる先生達を中心とした「飛び出し君」に対応するチームを創ってほしいという交渉でした。最初、相談しにいった先生からは「人に任そうなんて無責任だ!」と怒られました。わたしは、週に2時間しか教室にいないという実態がある以上、職員室で待機している先生達の協力が必要ですから、「飛び出し君」の対策チームを校内につくって下さいとその先生の上司に交渉し、押し切りました。「飛び出し君」が1番最初に教室を飛び出していったのは、わたしを怒ったその先生の授業の時のことで、わたしが「飛び出し君」を探しに行き、その先生は授業を続けました。その後、「飛び出し君」が授業中に教室を飛び出していき探すということはありませんでした。何かあったら職員室の先生達が対応してくださるというのはわたしの安心感になったこと、2つの席を教室に用意する対応が「飛び出し君」に適していたからだと思います。

学校全体で「飛び出し君」対策を相談することは1つのメリットと1つのデメリットがありました。

メリットとしては、「飛び出し君」が教室を飛び出していった時に、職員室で待機している先生達に「飛び出し君」対応をお願いすることで、教室の子ども達への授業を続けられる安全策がとれたことです。安全策を事前に用意しておくことで、わたしは安心し子ども達と関わることができました。

デメリットとしては、「飛び出し君」の対応策がいろいろな視点から意見がでて練られることをわたしは期待していたのですが、現実は発言力の強いアメとムチ系賞罰指導の先生が旧態依然とした対応策を主張したことです。特に「怒鳴る」指導を「飛び出し君」にもして、教師の言うことを聞かせようとする無知・無理解にはほとほと困りました。

「ADHDタイプで反抗挑戦性障害という二次障害をもつ子どもは権威のある人に反抗するので、怒鳴れば怒鳴るほど、負けまいとして反抗します。広汎性発達障害のある子どもは怒鳴られるとパニックになります。聴知覚に困難をもつ子どもは大声になると音が割れて内容が聞き取れなくなります。過敏性ゆえに耐えきれなくなって、教室を飛び出すかもしれません。家庭で大事にされていない子どもは、親に怒鳴られたいやな思い出がフラッシュバックして、興奮します。引用『あったかクラスづくり ―通常の学級で無理なくできるユニバーサルデザインー 高山恵子編 松久真実・米田和子著』」

声のトーンを落としたり、静かに話しかけたり、子ども達の心が落ち着く時間を創ったりすることも大切でした。

参考:アメとムチは愛のムチか無知のムチか~子ども達の姿が真実~

まとめ

以上、4つの視点からお話しをしました。

「飛び出し君」と学校全体の関係性について

「飛び出し君」の実態を学校全体で共有したことは、「飛び出し君」への対応をそれぞれの教師が考えるきっかけとなりました。特に若い先生方にとっては、柔軟に対応するヒントを提供したと思います。

一方でわたしは、ある先生から「みんなが決めたことがあなたのやり方と違っても、みんなの決めたことに従うよね」と聞かれたことがありました。わたしは、返答に窮しました。なぜなら、例えみんなの決めたことであっても、決めた内容が旧態依然としていて目の前の子どもの実態に適していなければ、わたしは決してしない、わたしという人はそんな人なのだと「飛び出し君」との関わりを通して自覚できたからです。わたしにとって職員室のみんなよりも、目の前の子どもが優先で、周りの先生にどう思われるかなどは、判断基準の材料ではありませんでした。この出来事からわたしにとって「何が大切か」「何が優先か」が分かりました。

「飛び出し君」と教室全体の関係性について

「飛び出し君」が安心するクラスは、クラスの子ども達みんなにとっても安心するクラスになりました。「飛び出し君」に出会うことで、子ども達は違いを超えて共にいるということや、友だちを深く理解するということを学びました。子ども達の心が「飛び出し君」に出会い共に過ごすことで、とても耕されたのです。わたしにとってもそうでした。

自分と「飛び出し君」の関係性について

わたしにとっては、教員人生最も困難な課題をもたらした子どもが、最も喜びを与えてくれた子どもでもあったということです。

参考記事:人生の喜びとは何か、そしてその喜びはどこにあるのか

自分と自分の関係性について

困難に出逢い「意志力」が鍛えられて、たいていのことは「大丈夫」と思えるようになりました。

おわりに

質問をされた方に、分かりやすく簡単にお答えしたいと思いつつ、長文になりました。なぜなら、心が傷ついて暴力をしたり暴言を吐いたりする子どもを目の前にして、その子どもに適した対応をすることは決して簡単なことではないからです。だけど、何とかしたいと思うからこそ、質問されたのだと思います。「何とかしたい」という想いを大切に、小さなことから、できることから試みて下さい。あなたの一歩一歩を応援しています。

たまゆらフォト


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     わたしを支えた言葉

ABOUT ME
ペンギン先生
ペンギン先生(たかはし あやお) 愛知県在住。元小学校教員。講師。(近い未来)作家。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

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