ペンギンのお庭

絵本「だいすきな先生へ」を読んで

手元に届いた一冊の絵本

先月の初め(2020年4月)、一冊の絵本がわたしの手元に届きました。

おちつきがなくて
こまったことばかりする
せいとだった女の子が
先生とのすばらしい1年間の思い出を
一通の手紙に書き綴りました。
先生とせいとのゆたかなつながりを描いた絵本です。


デボラ・ポプキンソン文
ナンシー・カーペンター絵
松川真弓やく
出版社 評論社


ご自宅に1000冊以上の絵本を所蔵する方から

「この本はお宅にあるべきだ!と思ったの」というメッセージと共に

わたしの誕生日プレゼントとして届けられたのでした。

2020年4月、コロナウィルスの影響で、

それまで活動していた国語教室や自然体験活動(ソトカサ)などは全て中止、

自宅で一人過ごすことが多くなりました。

外で降る雨の音を聴きながら

この絵本を一人読み、そして読みながらわたしは心動かされ、

あるの男の子とのエピソードを思い出しました。

男の子との出会いは、わたしが教員になった一年目、

初めて担任したクラスにいた9歳の男の子でした。

ほっそりとした身体つき

どこか控えめで優しい心の持ち主でした。

その後、わたしはその男の子の妹も担任することになりました。

ある日のことです。

その男の子の妹がわたしに伝えたことが、

どうも本当じゃない、嘘をついている気がすると感じたわたしは、

お母さんとお会いをした際、

「咄嗟(とっさ)に嘘をついているのではないかなと思うときがあります。

正直に話をすることが怖いとわたしに対して思っているのでしょうか。」と

率直に尋ねてみたことがありました。

するとわたしのお伝えしたことに対して、

お母さんから「時間をつくってください」と連絡がきました。

お母さんから打ち明けられたこと

「実は、わたしも娘が嘘をつくことが気になっていたのです。」

という会話をきっかけに、

機会をつくってお母さんと話し合いを重ねることになったわたしに、

お母さんはいろいろなことを打ち明けてくださいました。

親の愛を知らずに育ったこと

子育て方が分からず、苦しんで鬱になったこと

女の子が小さなころ、手をあげたことが何度もあること

お母さんから打ち明けられるたびに

「いったいどう対応したらいいのだろうか、、、」

「わたしに何ができるだろうか」と悩みました。

お母さんと2人、相談をし合いながら、

怖さから嘘をついてしまう女の子が、

正直に話をしても「大丈夫だった」という経験を

少しずつ重ねていくことで、

女の子が将来とても困って、誰かの助けが必要になったときに、

お母さんや家族、身近な人に打ち明けても

「大丈夫」「安心できる」と思える関係をつくっていきましょう、、、

というようなことを、わたしは、

学校を転勤するまでの約2年間をかけて試みていました。

その後、男の子が高校3年生となり、

数年ぶりに彼と再会をしました。

すっかり背は高くなり、わたしを追い越していました。

「久しぶり!お母さんから教育系の大学に進むってきいたよ。」

と声をかけると、彼はわたしにこう言ったのでした。

「ぼく、先生みたいな先生になりたいから、進学先を教育学部と決めたのです。」

わたしは彼の言っていることに驚いて、

さっぱり理解できませんでした。

彼を担任していた頃のわたしは、先生になって1年目。

懸命だったことは自分で認められたとしても

これができたと誇れるようなことは何一つもありませんでした。

「何を言っているのかなあ」と驚くばかりで、

なぜ彼がそう言うのかが分からずに

疑問だけが心にずっと残りました。

今回、絵本「だいすきな先生へ」を読んで、

わたしの中の一つの答えが見つかりました。

「親の愛を知らずに育ったから、

愛情をもって子どもを育てられないんじゃないか」

そうわたしに打ち明けた彼のお母さんの姿を

子どもの頃に両親が亡くなった父の姿と重ねながら

「決してそんなはずはないよ!」

と、わたしが心の底から思っていることを

どう伝えたらお母さんの心に届くのか分からず

悩みながらも話し合いを重ねるわたしの不器用な姿を、

少しずつ心開いていくお母さんの姿を通して

彼は認めてくれていたのかなと思いました。

再会した彼と駐車場で立ち話をしてから約6年が経ちました。

あの時の思いを叶えて先生になったのでしょうか。

もし、叶えたとしたら

子ども達と泣いたり笑ったりする素敵な日々が

先生となったあなたに訪れますように。

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ABOUT ME
ペンギン先生
ペンギン先生 愛知県在住。元小学校教員。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

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