天才のたね

漢字が苦手な子どもに、適切な学び方をさがす(後編)

漢字テストが大嫌い!!!

「漢字テストが大嫌い!!!!」だって「遊びたい放課に再テストをするから。」だから「漢字テストを一回で合格したい!」という4年生の男の子が我が家を再び訪れました。

以前、彼が我が家を訪れた時のお話しはこちらです。

漢字が苦手な子どもに、適切な学び方をさがす(前編)

公立の学校では、漢字をノートに何回も繰り返し書いて練習する覚え方が主流です。そのやり方で、漢字を覚えることができないことで、「(漢字を覚えられない自分は)バカな子」「ダメな子」と誤った思い込みをしてしまう子どもがいます。本当は、覚え方、学び方が子どもにとって適していない場合も多いのです。

ペンギンが大好きな男の子とわたしは、先ずは、ペンギン体操を2人で踊ってリラックスしました。以前伝えた学び方は、ノートに何回も繰り返し練習して覚える学び方よりも彼に合った方法だと思われましたが、1回で合格したことのない漢字テストを前に「やる気スイッチ」をどう入れようか、彼にとって苦手なことにどう取り組んだらいいのかが分からず思いあぐねている様子でした。「放課に再テストをやりたくないから」という嫌だから「やる」より、嬉しいから「やる」の方が子どもは力を発揮します。そこで、最初に彼の視点を変えて未来を創る質問をしました。

未来を創る質問をする

「一回で合格したらどんな気持ち?」

「やったーって嬉しい気持ち」

「じゃあ、その嬉しい気持ちになるためにペンギン先生に何かやってほしいことある?」

「合格するための練習に協力してほしい。いつものように励ましてほしい。ママにやり方を教えてほしい。」と、彼から3つのお願いがすらすらとでました。1つめ、2つめはクリアできそう、3つめの「ママのやり方を教えてほしい」のところは、ママも漢字テストに疲れているように思われたので「3つ目のママのところをペンギン先生が毎日10分メッセンジャーで一緒にやるのはどうかな。」と提案してみました。すると、「いいよ!」と即答だったので、「じゃあ、出来るかどうか1度試してみようよ。」となりました。

対話をしながら、何をするのかを決める

メッセンジャーを使った漢字学習を行うために、話し合って次のことを決めました。彼が決めたことは、

・2月25日の漢字テストに向けて、5つずつ覚える

・カードに書いて準備をしておく

わたしからの提案は、

・夜一緒に練習して間違えた漢字を、朝、もう一回見ると覚えられるよ。

 伝えた理由:間違えた漢字を投げ出さないようにするために、何をしたらいいのかを具体的に提示すると行動しやすくなるから。やるかやらないかは本人次第。やらなくてもダメ出しはしない。

・満点を目指すよりも、合格を目指す方がより力を発揮できるよ

 伝えた理由:100点という結果に強くこだわることで、途中分からない漢字があった時に落ち込んで、集中が途切れてしまったり、次の問題に取り組めずに時間切れになってしまったりすることを予防する

2人で決めたことは、

・3日坊主にならないように、4日はやろうね

2人で話し合いが終わると、彼はお母さんのところに飛んでいき、お母さんにくっついて、帰り際に「ねえ、ママは幸せ?ぼくは、日々ママと過ごすのが幸せなんだよ。」と言っている様子に、胸がきゅんっとしました。こんな一瞬(ひととき)の積み重ねが子どもの「生きる力」を育んでいるんだろなと感じました。

決めたことを、試みてみる

翌日から、1日に1回10分~30分ぐらいの間で、漢字の学習の伴走スタートです。

1日目:約束の時間前に、自分で決めた5つの漢字をカードに書き、準備をして待っていました。

・今日の漢字5つを空がきをする

・覚えられないのは、翌日もう一回する

・思い出せない時は、とばして最後に考える

ということをしました。彼には、一瞬「ん?」と悩んで直ぐに分からなかった漢字にも付箋を貼って繰り返し覚えようとする前向きなところがありました。一瞬の動作でしたが、苦手な漢字を学ぶ上でよい向き合い方なので、そこをフィードバックしました。間違えたところを指摘することも学ぶ上では大切ですが、実はこのように子どもが努力や工夫をした小さな瞬間を見つけてフィードバックし認めることで、子どものやる気を高めていきます。1日目の様子を見守っていてくださったお母さんから「楽しそうにやっていたのが、一番印象的でした!あと、自分から工夫をしようとしていることや、自分が覚えるために考えたりしようとしていることなど、とてもいつも漢字を覚えている時間とは思えないくらいです。途中でも、楽しい!言葉がでていたほど。メッセージャーに繋ぐ前は『緊張する。』と言っていましたが、始まったら楽しそうでした。」とメッセージをいただきました。

わたしは、自分から工夫をしたり自分が覚えるために考えたりすることで、創造性と自己決定力が養われること、それから、自分で決めたことはうまくいったら自信になるし、うまくいかなかったら次はどうしたらいいのかを考える材料になるのでどちらにしても学びになることをお伝えしました。

2日:大臣の臣の書き順が、こうやって書くんだ!初めて知った!と興味をもつ

3日目:臣の書き順を覚えていました。

・「やりたい気持ち」が出てきました。

・間違えた「改良」と「改める」を明日の朝、もう一回練習すると言いました。

始める前に「3日坊主になったらどうしよう、、、」とつぶやいていたのもあったので、まず、3日間続いたことを「ばんざーい!」と喜び合いました。お母さんからは、「いつもはゲームやテレビ三昧。ペンギン先生と始めてから、何も言わなくても、6時から準備をし始め、漢字を書き、覚えていて、6時半を今かと待っています。自分で動くことも3日、続いています。こんな姿は初めて見ます!よっぽど楽しいんでしょうね。ありがとうございます。」とメッセージをいただきました。

4日目:満足の満 下が短い

・児童館の児 目じゃなくて日

間違えた漢字があっても、嫌がらずにパッと間違い直しをするようになっていました。

5日目:50問テストの字が太くて、練習プリントからもやる気が感じられました。間違えていた漢字があっても、全部書いて答えていたことに、達成感を感じている様子でした。そして、「間違えた字はどうする?」と聞くと、「正確に書ける様に、紙に一回書いて練習する」と応えました。どうしたらいいのかを自分で考えて、「こうする」を決めて(自己決定)、一つひとつ取り組んでいくことで、自信がついていきます。わたしは、間違っている漢字は、どこが間違っているかを具体的に指摘します。はねがない、はらいが短い、口がかっくんとしていない、書き順が違っているなどなどです。ただ、指摘をする時に「この方法で覚えなさい」と言ったり「やるって言ったよね(なのにやっていない)」とダメ出ししたりはしません。どこが間違っているところを指摘したら、子どもが「こうする」と自分で決めるのを待って、努力や工夫したところを見つけて認めることをコツコツ続けます。このような調子で9日間行いました。

漢字テストの前日

そして、漢字テストの前日に、1度プリントに書いて練習をしました。「とめ・はね・はらい」のところで、何カ所も間違いがありいつもより練習できたのに、間違えちゃうと落ち込んで涙が出た様子でした。その様子を「もっている力を全て出しきれますように」という気持ちで見守っていました。すると、「もし明日間違えたら練習するから、合格してもしなくても、もう1日おつきあいお願いします。」と彼からリクエストがありました。わたしは、1回で合格してもしなくても、自分の可能性を諦めないんだなと思いました。「分かったよ。頑張っていることで間違えると悔しい気持ちになるね。応援しているね。」とエールを送りました。お母さんからは「相当疲れていましたね。明日までどうするかは、本人に任せますね。ありがとうございます。」とメッセージをいただきました。

そして、漢字テストがあった日、いつもの時間にメッセンジャーをつなげると

「1回で合格できた!やったーーー!嬉しい!」と彼から報告を受けました。

おわりに

学校に行くということは、初めてのことやできないことがあって、毎日、毎日、坂道を歩いているようなものです。だから、できて当たり前じゃなくて、できないことがあって当たり前なのです。できないことがあった時に、「できないからダメな子」ではなくて、「その子どもに適した学び方は何かな?」という視点からアプローチすると、子どもの可能性が広がります。

今回は、子どもに適した学び方を見つけて、子どもと対話をして何をするかを決めて、試みたら1回で合格できたお話しでした。

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ABOUT ME
ペンギン先生
ペンギン先生(たかはし あやお) 愛知県在住。元小学校教員。講師。(近い未来)作家。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

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