学級委員さんのスピーチ
3月になると、いつも思い出す子ども達とのエピソードがあります。3年生の3学期の始めに学級委員さんを決めることになりました。たくさんの立候補者の中からそれぞれの想いをスピーチして選ばれた2人は、どちらも学級委員さんになるのが初めてでした。とびきり人見知りの女の子は
「このクラスを笑顔満点のクラスにしたい」
ちょっと頼りない男の子は
「みんなに頼ってもらえる学級委員になりたい」
とスピーチをして学級委員さんに選ばれました。
新しい学級委員さんが決まったので、2学期の学級委員さんが2人の横に立ち応援スピーチがありました。2学期の女の子の学級委員さんは、教室のみんなに向かって
「2人とも初めての学級委員でドキドキしていると思うから、私たちに協力してくれたよりももっと協力してあげて下さい。」
とスピーチをしました。2学期の男の子の学級委員さんは、3学期の学級委員さん2人に向かって、
「勇気を出して立候補して、選ばれなかった子の気持ちをくみとってその子の分まで頑張って下さい。」
とスピーチをしました。
学級委員さんになれなかった子どもの想い
立候補をして選ばれなかった子どもの中に顔を伏せて泣いている一人の男の子がいました。チャイムが鳴って放課の時間になっても顔を伏せて泣いている男の子の横に黙って立って待っている2人のお友だちがいました。一人の子は泣いている男の子の肩をさすっていました。わたしは、その様子を見守っていました。やがて男の子が泣き止んで顔を上げたときに待っていた2人の友だちは「一緒に遊ぼう」と声をかけ、男の子が「うん」とうなずいて外に遊びにでかけました。放課の時間が終わり、遊びから帰ってきた男の子にわたしは
「どうして涙がでちゃったの」
と聞いてみました。すると、その男の子は
「みんなのために、ぼくやりたいことがあったからどうしても学級委員になりたかったんだ。」
そして、
「ぼく、初めて学級委員さんになった2人に協力したい。」
と言いました。わたしは彼がそう思えたのはきっと、泣いている彼の側でじっと待っていてくれた2人のお友だちのおかげでもあるなと思いました。
子ども達との最後の授業
この子ども達との最後の授業は、「モチモチの木」という物語文を読んで感じたことを発表する授業でした。「モチモチの木」は、小心者の豆太が突然腹痛になった大好きなじさまを助けるために、真夜中、お医者様を呼びに駆け出して行く物語で、その物語の中で、じさまが豆太に向かって、「~中略~自分で自分を弱虫だなんて思うな。人間、やさしささえあれば、やらなきゃなんねえことは、きっとやるもんだ」と言う場面があります。わたしは子ども達に、「自分で自分を弱虫だなんて思うな」と書いた作者は、何をあなたたちに伝えたいのかと問うてみました。すると、ザワザワしていた子ども達の心が静まって、ノートにそれぞれに書き出しました。そして、書き出した言葉を子ども達が発表していきました。
いつも友だちとケンカになってしまう自分を変えたいと努力していた男の子が言いました。
「勇気を出して、自分を信じること」
不登校傾向から学校に来るようになった女の子がいいました。
「自分の悪いところばかり見て、自分を決めつけずに、勇気を出してチャレンジして、才能を見つけて、またチャレンジすること」
完璧にやりたくて失敗することが怖くて挑戦できなかったことに、挑戦するようになった男の子が言いました。
「最初からやらない悔いよりもやって残る悔いの方がいい経験だということ」
係決めでなかなか決められなくて泣いたことのある男の子がいいました。
「人間は生まれてから一人ひとりの心はおくびょうではなく、人それぞれ違ったいろいろな個性があること」
子ども達の発表を聞く度に、その子との一年の思い出が蘇ってきました。そして、一人ひとりの子ども達の言葉を心で聴きながら1年間を共に過ごした子ども達一人ひとりの成長を感じた瞬間でした。
おわりに
子ども達の発表を聞いた後で、この一年一緒に過ごせてとても嬉しかったこと、そして、一人ひとりに必ず1つは「天才のたね」があるからね、とわたしは子ども達にお話しをして、最後の授業を終えたのでした。
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