天才のたね

放課の時間に1人で絵を描いていた女の子のこと

お母さんの訴え

「娘は3年生の頃いじめられていて、、、、」

初めて出会ったお母さんは、そう言って玄関先で泣き出しました。

崩壊したクラスの担任となって3週間、

4月下旬の家庭訪問での出来事でした。

「友だちとあまり一緒に遊ばないのは、

きっと3年生の頃にあったいじめが原因だと思います。

娘は〇〇さんと〇〇さんに、いじめを受けて辛い思いをしました。

今日は何していたのと聞いても、

1人でいることが多いみたいで心配です。」

涙ながらにわたしに訴えるお母さんに、

「分かりました。放課の時間の様子をみてみますね。」

と、約束をしました。

放課の時間の女の子の様子

その女の子は放課の時間になると、確かに1人で絵を描いていることの多い子でした。

ただ、女の子の様子がわたしは「あれ?何だか楽しそうかも、、、」と感じられました。

周りとの関係性もそんなに悪くはなさそうでした。

ただ、独特な感性をその女の子から感じとりました。

みんなと一緒のことをすると安心する子もいれば、

みんなと異なることをすると安心する子もいます。

どうも彼女は後者のタイプに思えました。

ある日、彼女に聞いてみました。

「放課に1人で絵を描いていることが多いね、、どうして?」

すると彼女は

「わたし、絵を描くことが好きなんだけど、

家だと弟に邪魔されて落ち着かないから、

学校のこの時間が一番落ち着いて描ける時間なの」

と応えました。

わたしは、なるほどな、、絵を描くことがよほど好きなんだなと思いました。

「だれかなクイズ」カード

一学期の個人懇談が近づいてきました。

「1人でいるのは3年生の頃のいじめが原因」

と思い込んでいるお母さんに、

どうお話しをしたら伝わるだろうかと思案しながら、

保護者の方が楽しめるよう

「だれかなクイズ」カードを廊下に掲示していた時のことです。

あるカードに目がとまり、わたしはプッと吹き出しました。

「だれかなクイズ」カードというのは、好きな食べ物、似顔絵、

一学期努力したことなどを子ども達に無記名でカードに書いてもらい、

個人懇談にみえた保護者の方々に当ててもらおうというクイズカードです。

そのカードには、直径8㎝ぐらいの丸い円があって、

わたしはそこに「似顔絵を描いてね」と子ども達に伝えていました。

個人懇談の日に

個人懇談の日がやってきました。

「うちの子どもは大丈夫でしょうか、、、」

と、心配そうなお母さんに

「お子さんのカード、どれだか分かりましたか?」

と、わたしは聞きました。すると、お母さんは、

「もしかして、これかしら、、、、笑」

と言ってある一枚のカードを指さし笑ったのです。

みんなが似顔絵を描いているカードの中に1枚だけ、

クラッカーの絵が描かれ、

丸い円から紙テープや紙ふぶきが飛び出していました。

「娘さんはこのように枠には収まらないお子さんのようですね。

絵を描くことがとても好きで、放課の時間を楽しそうに過ごしていますよ」

と伝えると、お母さんは深くうなずき、

「確かに、周りの子どもとは違いますね、、、

娘はよほど絵が好きなんですね、、」

と納得している様子でした。

その時にお母さんのまなざしが

心配から信頼へと変わったようにわたしには感じられました。

放課の時間になるたびに、絵を描いていた女の子は、

彼女のユニークな感性を活かして特異な絵を画き、

その年も、翌年も

絵画コンクールに出展するたびに、

受賞したのでした。

関連記事:「ふわふわとチクチク」 

     (こちらの記事の中の「10歳の女の子の作品」は彼女の作品です)

「ぺんぎん物語」 (こちらの絵も彼女の作品)

ABOUT ME
ペンギン先生
ペンギン先生 愛知県在住。元小学校教員。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

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