ペンギン先生の実践

自分を責めることをやめたんです~「初任者君」との会話~

教員採用試験を合格し教員となった一年目の方々は、初任者研修を受けその後正式採用となります。わたしは「初任者君」が研修で校外へ行っている間のクラスの後補充を、年に10日間ほど任されています。

4月、黒板に書かれた「初任者君」の言葉

「先生の言うことをよく聞いて、、、、」

と黒板に書かれた「初任者君」の言葉を読んだ時に、

「ん?このままだとこのクラス、崩れるな」

と感じた通り、

2学期が始まって、久しぶりにクラスに訪れると

授業中立ち歩く子、

ケンカになると相手を口汚く責めるのに自分のことは振り返らない子

授業中に意見を言った時の周りの反応が嫌で言わない子

相手に向かって気持ちは伝えないで陰で悪口を言う子

このような子ども達の姿が増えていました。

わたしはこのままだと、クラスが崩壊に向かっていくので

「教室の中って失敗してもいい場所なのに、『正解』を当てないといけない場所になっていて、子ども達の試行錯誤や工夫の時間がありません。」

「〇〇君に対して、〇〇君だからできなくても仕方が無いという周りの大人達が諦めていることが気になります。本来であれば〇〇を作成する必要のあるお子さんだと思いますが、そのような対応はしていますか。」

と周りの先生達に、「初任者君」のサポートに入っていただけるよう少しずつ伝え、子ども達には、男の子同士の大げんかの後に「ふわふわとチクチク(選択理論の考え方の一部)」のお話しをしました。

「初任者君」との会話

1週間後のことです。

その日は、「初任者君」が授業をしている時にわたしも授業の支援に入る日でした。

1人の男の子が、授業始まった時から廊下に出て歩いていたので、わたしは男の子に寄り添いました。ある寄り添い方をしたので、その男の子はすぐに教室に戻り、授業にも参加して、加えて周りの子ども達の発想を刺激するような意見も言いました。その時の「初任者君」の関わり方に、またまた「ん?このままではマズいな」と感じたわたしは、さてどうやって伝えたらいいものかと考えました。何しろ、目の前の「初任者君」は、研修に学級経営に授業にと、慣れないことばかりの日々に、いっぱいいっぱいの様子が見てとれたからです。だからといって、わたしが気づいていることを何も伝えないままにして放置すると、クラスはこのままどんどん崩れていきます。

わたしは、「ああ、またまたお節介虫発動だなぁ」と自分でも思いながら、彼が研修から帰ってくるのを待ちました。そして、研修から帰ってきた彼に子ども達の様子を伝え

「本当のところ、結構困っていること多いでしょ。本当は、どんなクラスにしたいと願っているの」

と、率直に聞きました。

すると、「初任者君」は

「先生が来て、子ども達にお話ししてくれた後の3日間ぐらいは、クラスの中が温かくて久しぶりに学校に来ても楽しかったんです。だけど、またギスギスし始めて、、、、ぼくは、本当はお互いに認め合える温かなクラスにしたいんです。」

わたしはコーチングの手法を使って、彼が今のクラスをどう捉えているのか、お互い認め合えるとは具体的にどんなことなのか、、、を問いかけながら聴いていきました。彼の混乱している頭の中を整頓していくのです。

同時に、厳しいかもしれませんが、わたしが「ん?」と感じた彼の子どもへの関わり方を伝え、子どもにそう関わってしまう彼の内面に何があるのかを探っていきました。

すると、彼は自分に向き合った後で、わたしにこう言ったのです。

「ぼく、、、、、、実は上手くいっていないって気づいていたんです。自分のことをダメだ、ダメだと責めていました。人生で一番、自信を失っていました。だから失敗する子どもを許せなかったし、〇〇さんにも冷たく関わってしまったんです。」

わたしは、彼の言葉を受けて、「自分責め」をやめるコツを伝えました。

「初任者君」が変わると、子どもも変わる

それから、2週間後、、

再び教室を訪れました。

クラスの雰囲気が変わっていました。

子ども達の表情も穏やかになっていました。

立ち歩いていた子どもも、授業の最初から席に座ってノートを書くようになっていました。

相変わらずケンカをすると口汚く責め合うし、「ん?このままだと、、、、」と感じる場面もあります。

だけど、子ども達らしい姿や表情、笑い声が以前よりも増えていました。

わたしは、「初任者君」に

「最近、どう?」

と聞きました。すると「初任者君」はこう言ったのです。

「ぼく、自分のことをダメだって責めることをやめたんです。」

わたしはにっこりと笑って、彼に問いました。

「本当はどんなクラスにしたいんだった?」

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ABOUT ME
ペンギン先生
ペンギン先生 愛知県在住。元小学校教員。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

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