きらめくいのち~まあるくなあれ、環になあれ~

「飛び出し君」が転校してくる!

1週間の中で2時間、教室に居るか居られないかが分からないという「飛び出し君」が転校してくる!

「飛び出し君」が転校してくる前に、「飛び出し君」について何も知らない私のところに、彼についてのあれやこれやが教務先生、当時の担任の先生、保護者、子ども達から順に入ってきました。

一番最初は、夏休みの終わり頃‥

教務先生が何ともいえない表情で、「先生、今度の転校生は、かなりご苦労をおかけすると思うわ。1度、担任の先生にお電話して下さい」との言葉と共に電話番号を渡されました。

「飛び出し君」の担任の先生にお電話すると、30分以上にわたって彼の「問題」行動ばかりのお話しが続き、彼のよさや上手くいった手立てについて何一つ聞けませんでした。そのため、「電話だと不十分なので1度学校に来て下さい」という当時の担任の先生の申し出は速やかにご辞退しました。

その後、保護者の方からお電話がありました。「今度の転校生のことでお母さん達がかなり動揺しているよ。先生、お願いだから潰れないでね」という応援と励ましのお電話でした。

そして、彼との初めての出会いは放課後の校長室‥

初めて出会った「飛び出し君」は、校長室の応接セットにあぐらをかいて私をにらみつけ「大人なんか信じられるものか!」とばかりにトゲトゲチクチクエネルギーを大放出していました。だけど、同時に「友だちがほしい」「独りは寂しい」「新しい学校で新しく変わりたい」という気持ちも、僅かに伝わってくる9才の男の子でした。

 

『飛び出し君』に初めて出会った翌朝、「さてクラスの子ども達にいったいどこまで話をしたらいいのだろうか‥そのままを伝えたら子ども達が怖がるんじゃないか‥先入観を植え付けてしまうのではないか‥」と、もんもんと考えながら廊下を歩いていた時のことです。

子ども達が私を見つけて駆け寄ってきました。

「先生~~おはようございます!知っている?

今度の転校生、かなりのやんちゃなんだよ!」

子ども達から「飛び出し君」の話しがでたのです。

「あれまあ、転校してくることも、彼のことも知っているの?」

「知ってるよ。保育園一緒だったもん。」

私がもんもんと考えなくても、子ども達は知っていたのです。

子ども達が知っているのなら、子ども達に聞いてみよう!

「やんちゃって言うけど、どれぐらいやんちゃなの?」

「うんとね、すごくやんちゃだよ。

保育園での〇〇事件とか、〇〇事件とか、彼なんだよ。」

と、9才の子ども達が保育園であった出来事をいろいろと振り返って話す、話す‥

そして、事件が出てくる、出てくる‥

それを聞きながら、

「う~~~ん、なるほど。なかなかのやんちゃですな。これはチームが必要ですな。」

「先生、それはいるね。必要だよ。」

さて、何を大切にするチームにしたらいいだろうか。心の中でつぶやいた時に、「飛び出し君」の「友だちがほしい」「独りは寂しい」「新しい学校で新しく変わりたい」という彼の望みを大切にしたいなと思いました。

「いったい誰がすっごくやんちゃな飛び出し君にも優しくできるだろうか。」

と子ども達に聞いてみました。急遽、子ども達と廊下で環になってわちゃわちゃ会議が始まり、子ども達の意見として出たのは、すみれちゃんでした。

「すみれちゃんだったら、『飛び出し君』に優しくできる。」

「あ~すみれちゃんなら優しくできるかもしれない。逆にあかぼし君はすぐにけんかしそうだね。」

「するね~、そうなったら教室の中が大変だよ。」

と、子ども達がわちゃわちゃと話すのを聞いていました。

すみれちゃんは3年生で特別支援に移籍したやんちゃな、でも本当は心が寂しい男の子の気持ちを2年生の時にずっと代弁していた女の子でした。

すみれちゃんを呼んで、聴いてみました。

「今度ね、『飛び出し君』が転校してくるの。『飛び出し君』のこと知っている?」

「先生、私『飛び出し君』のこと知っているよ。」

「『飛び出し君』が教室にずっと居られるしたいんだ。そのためにねチームを今考えているんだけど、すみれちゃんはどう思う?」

「先生、私『飛び出し君』と仲良くできるかもしれない。でも独りだと悲しいから、だれかと一緒がいい。」

と、すみれちゃんましたは応えました。2年生の頃にやんちゃな男の子の気持ちを一人代弁するすみれちゃんに、「何であんなやつの味方をするんだ」と強くあたる子がいたこと、アメとムチ先生がやんちゃな男の子を「ダメ子な子だ」と言って教室から力ずくで教室の外に出すのを見たことがすみれちゃんには悲しかったのです。

「誰がすみれちゃんの応援してくれるかな。すみれちゃんにとって一緒にいて安心する子はだれ。」

と聞いてみました。

しばらく考えていたすみれちゃんが、

「ひろひと君。ひろひと君となら私、大丈夫だと思う。」

と、すみれちゃんは応えました。

私はひろひと君と聞いて、普段の彼の様子をじっと思い出してみました。ひろひと君が優しい心の持ち主であることは間違いありません。ただ、本人自身が大変な努力家なので、彼の様にはやれない子に「なんで出来ないんだ」という態度をとり、「ダメだ」と強く注意するところが気になる子でした。

「飛び出し君」、すみれちゃん、ひろひと君‥4人の班の中の後一人、誰がぴったりだろうかと考えました。クラスの中で一番穏やかで平和な心をもっている子がいいなと思った時に、一人の男の子の顔が思い浮かびました。

「すみれちゃん、4人の班の後一人、こうすけ君はどうかな。彼はモノを創るのが大好きで、心がとっても落ち着いているから、4人ならいいチームになるかもしれない。」

「あ、先生、こうすけ君ならいいと思う。だけど、『飛び出し君』に困った時には、先生にすぐ助けてほしいから、先生のすぐ近くの席にしてほしい。」

「分かった。そうするね。我慢しなくていいからね。困ったり怖かったりしたらすぐ言ってね。」

と、話し合いました。

「飛び出し君」が転校する前日に、クラスの子ども達みんなに「協力してほしい」とお話しをしました。あわせて、喧嘩にすぐなるだろうあかぼし君にも「わざわざけんかしなくても、今までみたいにお話しにこればいいからね」と伝えました。

さて、転校1日目の1時間目

新しい学校で新しい自分でスタートするはずだった『飛び出し君』は、最初の5分で、「うるせ~ばばあ、ぶっ殺す」と言い放ち、教室から飛びだそうとしました。それぐらい「飛び出し君」にとって大人が怖かったのです。

転校してきた頃、「飛び出し君」は授業中何もやりませんでした。何もやらないというよりは、大声を出したり立ち歩いたりして授業妨害はします。暴れる、暴言を吐く、物を投げる、靴を隠す、机を倒してけんかする、授業中歩き回る、飛びだそうとする、「飛び出し君」は、それはそれはいろいろとやり、いろいろな事件も起きました。

だけど、気づいてみると私は一人じゃなかったのです。「飛び出し君」を真ん中にしてチームを創ったつもりが、すみれちゃん、ひろひと君、こうすけ君が私を支える最初のチームになっていたのです

その頃の私は、アメとムチ先生がよくやるやんちゃな子どもに大声を出して「暴れるな!」「お前出て行け」のように力で押さえたり、排除したりすることをやりたくありませんでした。深呼吸をして、「今は教科書を開けるよ」「今は鉛筆をもつよ」と静かに言い続けました。だけど、みんなの授業も進めないといけないから、いつもずっとはできませんでした。すると、穏やかで平和な心の男の子が、隣の席で私の代わりに「飛び出し君」がやってもやらなくても「今ね、鉛筆をもつときだよ」「今ね、教科書を20頁を開くときだよ」と、私が最初「飛び出し君」にやったことを代わりになって静かな声で言い続けてくれたのです。

すると、「飛び出し君」の気持ちが少しずつ落ち着いて、授業に参加しようとする姿勢をみせるようになりました。すみれちゃんは、「飛び出し君」が鉛筆をもった瞬間に「今、鉛筆もてたね」、教科書を開いた瞬間に「今、教科書開いたね」と、彼を笑顔で励まし続けました。すみれちゃんは、「飛び出し君」がちょこっとでもやろうとした瞬間を見つけて、それはそれは心の底から嬉しそうに喜ぶのです。すると、「飛び出し君」もつられて笑顔になっていったのです。

「ダメ!」と注意しがちなひろひと君には、「ダメ」と言わずに「今~するといいよ」と伝え方を教えました。すると、ひろひと君は「おかわりしちゃダメ!」という代わりに、「給食のおかわりは、50分からするといいよ」と伝え方を変えて、子ども達が守っている大切なルールを分かりやすく説明するようになりました。すると、「飛び出し君」は彼を信頼して、今どうしたらいいのかを聞くようになっていきました。

「飛び出し君」が暴れても、暴言を吐いても、私とすみれちゃん、ひろひと君、こうすけ君は、「飛び出し君」を避けることなく、「『飛び出し君』はダメな子だ」と心の中でも外でも排除することなく、ずっとずっと関わり続けました。そうするうちに「飛び出し君」が教室に居るようになり、授業中席に座るようになり、鉛筆をもって学習に参加するようになりました。そして、「飛び出し君」の心の中の寂しさに他の子ども達も気づき始め、「飛び出し君」に笑顔を向ける子どもが一人、また一人と増え始めたのです。

「飛び出し君」が女の子の靴を隠したたことがありました。友だちになりたいから話しかけたのに、女の子が「飛び出し君」を避けたのが嫌だったのです。女の子は「飛び出し君」の言葉使いが怖くて無視したのです。「ばばあとか、ばかとか悪い言葉を大きな声で言うのが怖い」と女の子が伝えると、「飛び出し君」は「悪い言葉を直したいだ」と本音を言いました。そして2人はいつしか笑って話すようになりました。

「飛び出し君」が暴れて、机をけり倒したことがありました。「ルールを守らないから一緒にゲームをしていてつまらない」と言われたのが嫌だったのです。泣いた男の子が「飛び出し君」と話し合いをする中で「飛び出し君」に向かって、ふと気づいたように「『飛び出し君』っていろいろ大変なんだね」と言いました。すると「飛び出し君」は「おれは、いろいろ大変なんだよ」と答えました。そして、男の子は「飛び出し君」のサポートをそっとする子になりました。

「飛び出し君」の乱れる心のままに、机の中も周りもくちゃくちゃに物が散らばっていました。私は、段ボール箱を机の側に置いて、「まずこの中に自分のモノはいれておこうね」と伝え、最初の1つを拾いました。すると、子ども達が「ぼくも拾うから一緒にやろうよ」と声をかけるようになりました。私が1つ拾う、子ども達が1つずつ拾う、そして「飛び出し君」も拾う。そうやって、机の中や周りが少しずつ片付いていくようになりました。

「なんで『飛び出し君』だけあんな勝手なまねが許されるんだ!」と怒って、私に抗議しにきた男の子がいました。私は、「飛び出し君」の成長の階段を黒板に書いて、「今一歩ずつ上がっているところなんだ」と説明しました。そして「なんでだと相手を責めて怒ることは簡単なんだけど、どうしたら出来るようになるかを一緒に考えることの方が難しかったりするんだよ」とお話ししました。すると、私が「『飛び出し君』め!もう、これ以上我慢できなーーーーーい!!きっー!!」っとなった時に、「まあ、『飛び出し君』だってやろうとしていたんだけど、今はまだできないんだから、先生待ってあげなよ。大目に見てあげなよ。」と私を慰める子になりました。

一歩ずつ一歩ずつ、「飛び出し君」は成長していきました。でも、家で暴力を振るわれたり、ご飯を食べさせてもらえなかったりした後で学校に来ると、「先生なんかに俺の気持ちがわかるか!」と言って暴れることがありました。そんな時に私が悲しくなって落ち込んでいると、「先生、ありがとう」「先生、心は傷ついていないの。大丈夫?」と言いに来る子が現れました。

ずっと不登校傾向だった男の子は「飛び出し君」に向かって、「おまえさあ、ちゃんと先生の言うこと聞けよ。おまえのこと思って言ってるの分かってんだろ」と、「飛び出し君」を諫めるようになっていました。「元不登校君」は、「飛び出し君」が転校してきて、給食を食べる時間が更に短くなった時に、私が給食を食べ終わるといつも私の給食を片付けに来てくれた子でした。

「飛び出し君」が転校してきて、約1ヶ月たったころ「先生、潰れないでね」と電話をかけてきた保護者の方からまた電話がかかってきました。「先生、あの『飛び出し君』ね、小さな弟をおんぶしたり、一緒に遊んだりして、優しいところがあるね。」という内容でした。わたしはそれを聞きながら心の中で、彼がもし彼のことを大切にできる家族の中で育ったら、「飛び出し君」じゃなくてちょっと元気のいい男の子だったんだろうなと思いました。

「飛び出し君」が転校して約一ヶ月後‥班を変える時期になりました。

すみれちゃんに「すみれちゃん、いろいろ大変な思いをさせたね。ごめんね。ありがとう。」と伝えた時に、すみれちゃんは、私の目を真っ直ぐ見て言いました。

「先生、全然大変じゃなかった。だって、こうすけ君はずっと今何をしたら良いのか言ってくれたし、ひろひと君はみんなが大切にしているルールを説明してくれたし、私は『できたね』って言って励まして、一緒にやったから嬉しかった。」と笑ったのです。私は、それを聞いて何て子どもの心は柔らかで優しいのだろうと思いました。

「飛び出し君」がトゲトゲしている時には、「飛び出し君」の寂しさに気づいた子ども達が彼を包みこむように関わるようになっていました。

そして、「くそばばあ!」と言われながらも「飛び出し君」に関わる私にも、子ども達が包みこむように関わるようになっていました。

丁度、この頃だったと思います。

給食の時間に「飛び出し君」も「元不登校君」も、いろんな寂しさを抱えていた子ども達にも心の繋がりができて、楽しそうに笑って一緒に食べていた時のことでした。教室の中が急に静かになって、子ども達の動きがスローモーションになって、金の粒が空からしゃらんしゃらんとふってきたみたいに、子ども達がみんなきらめき始めたのです。その時の光景のあまりの美しさに私は息を呑んでじっと見ていました。そして気づくとナミダが出ていました。子ども達も私もみんなで1つになったようなそれはそれは幸せな感覚でした。

最初は私と3人の子ども達‥その後に、1人、また1人と子ども達がまあるくなって環になって、トゲトゲでいっぱいだった「飛び出し君」の心を包みこみ、「飛び出し君」のいのちを活かそう活かそうとしました。「飛び出し君」も子ども達の優しさと思いやりに応えるように自分のいのちを活かそう活かそうとし始めました。すると、子ども達も「飛び出し君」も共にいのちのきらめきを放ち始めたのです。

私はこの経験を通じて分かったのです。

「愛」というのは、いのちを活かそう活かそうとする働き全て

 

花の名前は「ヒペリカム」 花言葉は「きらめき」

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Photo by Emmy

 

 

 

 

 

 

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