モンスターママとの日々~火を噴く「怪獣母さん」と魔法~

モンスターペアレンツっていましたか?

という質問をいただくと思い出すのは、

あるお母さんの顔…

そのお母さんは、

中学校の先生達からは

「もう対応できません…」

とサジを投げられた程、

烈火のごとく怒る姿が、

ガーガー火を噴く「怪獣」みたいで、

わたしは、心の中で

「怪獣母さん」と名付けていました。

 

「怪獣母さん」とわたしの

初めての出逢いの日は家庭訪問で、

家を訪れると、部屋の奥に

担任をしていた小学校3年生のR君がいました。

そのR君に向かって、「怪獣母さん」が、

「ばっかやろう~てめえ、さっさと宿題しろ!

さっきから言っているだろ(巻き舌)

宿題やったら、かし食っていいから。」

と、開口一番火を噴いて(後に、日常会話と判明)

「先生、我が家は

ビシビシとやっているので

先生もメリハリよろしく。」

と、にらみをきかせて言ったのです。

怒鳴り声がそもそも苦手なわたし…

(※後にHSPである自分を知る)

腰が引けながらも、

(ビシビシやってくださいって、

実際、全然宿題出ていませんけどーーー

「宿題やったら、菓子くっていい」って

お菓子で釣っていますけどーーーー

これってアメとムチやん

全然、効果ないやんか)

と、アメとムチ系賞罰指導の効果に

「怪獣母さん」の態度から

大いなる疑問をもったのでした。

 

R君は、不登校傾向の子どもで、

学校に遅刻して到着しては、

机の上でぐったりしている事がよくありました。

すると、授業中、

「R君、ちゃんとやりなさい!!」

「R君、立て!」

と、昨年に引き続き

授業の補助として入っていた

(体育会系)パワフル先生が

わたしが授業をしている声よりも

更に大きな声でR君に向かって叱責します。

身長151㎝のちびなわたしは

パワフル先生の責める声や

怒鳴る声を聞く度に

さらにその身を縮こまらせて、

恐竜の国に迷い込んだ

小人になった気分でした。

パワフル先生や「怪獣母さん」から、

「ビシビシやって」とか

「メリハリよろしく」とか

言われたからと

精一杯大声張り上げて怒鳴ったって、

「怪獣母さん」やパワフル先生みたいに

わたし、怖くなりませんから!

しかも、ぐったりしているR君に

むち打つような

自分の心がチクチク痛むことは、

やりたくありません…

ぐったりとするR君の姿に

浴びせられる大人達の怒鳴る声…

「あ~~何かいい方法はありますか~」

と、お空を見上げていたときに、

ひらめいたのです!

 

学校と家とでのアメとムチ系賞罰指導!

その結果が今のR君の無気力スパイラルなら、

やっぱり真逆の方法を試みるのみ!

ひらめいたら、即行動です!

アメとムチの賞罰指導とは真逆の

「静かな承認」作戦をスタートしました。

その「静かな承認」作戦とは、

教科書を開いた、席に座っているなど、

集団生活の中で「当たり前」と捉えがちな行動でも

子どもの実態を把握して

その現状を認め、

子どもが努力をしていることなら、

「できたね」「やっているね」と

こつこつと認める作戦です。

あと、笑顔をむける、うなずく、見るなど

子どもの存在を認める承認は、

崩壊をしたクラスの立て直しの際の、

初期に行って最も効果があった手立ての1つです。

その「静かな承認」作戦中に、

ふだんぐったりとしているR君が一瞬、

ほんの一瞬だけ、背筋を伸ばして

ピシッと座った瞬間があったのです。

その瞬間すかさず、

「ピシッと座れたね」

と、R君の近くに行き

耳元でささやきました。

耳元でささやくのは、

周りの子ども達から

「そんなことでR君褒められてる!」

という気持ちからR君を守るためです。

 

その翌日、

「怪獣母さん」が、

「先生に話がある!」

と、学校に現れました。

一瞬、凍り付く職員室…

わたしが行くと

「怪獣母さん」が、

「先生、うちの息子が『先生に褒められた!』

とよろこんでた。

先生は、何かふわふわだ。

先生のふわふわは、

何だかよく分からない。

先生のことを

信頼できるのかもまだ分からない。

だけど、息子が『先生に褒められた』

と言って喜んだのは、

学校に行って初めてのことだ!

だから、先生に息子のことを任せた。」

と、ガーッとまくしたてたのです。

そこで、わたしは、

(へっ?R君、学校に来て3年目で、

先生に認められたの初めてだったの!?)

と心の中でびっくりしながらも

「あ、そうですか。今後ともよろしく」

と、お返事をすると

「怪獣母さん」はのしのしと帰って行きました。

 

しばらくしたある日…

「怪獣母さん」から相談をもちかけられました。

「宿題をやれと言っても、

うるさい!くそばばあって言われるし、

どうしたら、子どもが言うこと聞くのか。」

という内容でした。

長い、長~い、それは長~い

母と子のアメとムチの歴史かぁ~

その長さを思い、どうしたらいいだろう…

と、お星様を見上げるように

遠い、遠~い目になっていたら、

ひらめいたのです!

さあ、「怪獣母さん」にどう話したらいいだろう…

と考えて、深呼吸すると

「怪獣母さん」の目を見つめて、

「お母さん、1ついい魔法があります。」

と、話を切り出しました。

「何だ、それ?」

と、「怪獣母さん」がのってきたので、

「何で宿題やらんのだ、ばかやろって言うと、

R君からは、うるせ~ばばあっと返事が返ってきますね。」

「返ってくる、本当に腹が立つわ。」

「一回でも『やる!』って約束するなら、

ある魔法の使い方をお伝えますよ。」

「やる、約束する。」

「約束ですよ~。(ニヤリ)

ジャジャ~ン。それは、『いいこと魔法』です。

ばかやろうと言うと、

ばかやろうが返ってきますね。

ということは、

ありがとうと言うと

嬉しいなどよい言葉が返ってきます。

このように

いいことすると、いいことが返ってきます。

『いいこと魔法ですよ』

先ず、最初にお母さんからR君に『ありがとう』など、

よい言葉を使って下さい。」

それを聞いた「怪獣母さん」…

「そんなことをやったら、子どもが図に乗るだろ!」

と、ガーガーと火を吹き始めました。

そこは、涼しい顔で、

「あれ~1つでもやったら伝えて下さい、ね!

1つでもやったら『花丸~』ですよ。」

と伝えて話しは終わりました。

 

すると、数日後「怪獣母さん」から、

弾んだ声で報告の電話があったのです。

「先生、本当だった!

どならずに頼んだらR、洗濯物手伝ってくれた!」

という内容でした。

そこですかさず、

「お母さん、花丸で~す。」

と、お返事したのです。

その後も頻繁に学校に電話が鳴ったり、現れたりする

「怪獣母さん」とのやりとりで、

1番のビックリな出来事は、

ある時、教室に忘れたテストを暗い廊下を通って取りに行って、

教室の電気をつけたら、そこに怪獣母さんが、

「弟の忘れ物をとりがてら、何かきちゃった」

と言って、教室の中で立っていたことです。

暗闇の中に「怪獣母さん」…

もうお化けかと思って、

腰が抜けるほど驚いて、

「そもそも、夜一人で教室に来るの、

わたし怖いですから、

明かりをつけたらいるというようなサプライズは、

お願いだからやめてちょうだい。」

と、お願いしたら、

「怪獣母さん」がテヘヘと笑いながら、

「来たかったんだ」

と言いました。

ちょくちょく電話があったり、

学校に現れたりする「怪獣母さん」と

お話しを重ねるうちに、

「怪獣母さん」が子どもの頃、

不登校だったことが分かってきました。

十分に通えなかった小学校に今通って、

子ども時代のやり直しをしているんだな

って思いました。

 

「怪獣母さん」が一番

ガーガーと火を噴いた出来事は、

パワフル先生が行った勘違いからの冷たい指導に

息子が家で泣いて、学校を行きたくないと言って

学校を休んだので、「怪獣母さん」が電話してきた時のことです。

電話の向こうから、火を噴く「怪獣母さん」の声が

職員室中に鳴り響きました。

職員室がマイナス50°に凍り付き、

上司にあたる先生が、

「あの母さんの上の子を担任した時に、

ぼくは、あの母さんの旦那さんや

その仲間に囲まれていろいろ言われて…

あの恐怖が、トラウマが…どうしよう、どうしよう」

と、部屋をうろうろしながら

うろたえていました。

周りの先生は、

「なんだ、あの母親の態度は」

と言って、怒っていました。

うろたえる上司に、怒っている先生達…

このままだと、R君は不登校への道一直線です。

わたしは、大きく深呼吸して広い青空を見ました。

「わたしに何ができるだろう…」

すると、ひらめきました。

そもそもですね、

大切なことは、

トラウマがとうろたえている上司の先生でもなければ、

火を噴く「怪獣母さん」でもないはずです。

大切なのは、学校に行きたくないと

泣いて訴えているR君の気持ちですよ!

ひらめいたら即行動!

「怪獣母さん」に電話をして学校に来てもらい、

「もともとはパワフル先生と

R君との間で始まったことだから、

ここはR君とパワフル先生と話し合いでいこうよ。」

と提案してみました。

黙って「怪獣母さん」が聞いていたところに、

普段「怪獣母さん」と何かとやり合っている

上司が一言口をはさんだ瞬間、

「怪獣母さん」は「だまれ!このくそじじい!」と

ガオーと吠えると、

職員室を飛び出していきました。

このままだとR君は学校に来なくなるかもしれない、、、

そう思って、

次は「怪獣母さん」のお宅訪問作戦かなと

自分のできることを練っていたころです。

なんと、「怪獣母さん」から電話があったのです。

「先生、Rと話したら、Rは先生となら話しするって

言っているから、(夜)7時に学校行くわ」

とのことでした。

「だまれ!このくそじじい!」と言って

職員室を飛び出していった様子からは

全く想像できなかった展開です。

パワフル先生にも学校に残ってもらい、

R君が学校に来るのを待ちました。

R君と「怪獣母さん」が現れると、

「怪獣母さん」が「先生と話しな」と言って

まずR君とわたし2人でお話しをすることになりました。

わたしは、R君の気持ちを聞き、

そして、R君の口から

パワフル先生が理由も聞かずに

R君のことを決めつけて怒鳴ったことが

とても嫌だったと

パワフル先生に伝えることになりました。

待っていたパワフル先生にお話しをし、

R君と話し合いの時間をもつことになりました。

そして、パワフル先生がR君に対して

理由を聞かずに怒鳴ったことを認めて、

「ごめんなさい」をして、R君は納得し、

翌日から学校に来ることが

できるようになりました。

わたしは、「怪獣母さん」が

上司を怒鳴って職員室を出て行った後で、

まさかR君にお話ししてくれたなんて

考えてもいなかったので、

どうしてR君に話す気になったのか

「怪獣母さん」に聞いてみました。

すると「怪獣母さん」は、

「Rに学校に来てほしいという気持ちで

先生は、一生懸命話してくれたのが分かったから」

と教えてくれました。

 

火を噴く「怪獣母さん」との大波小波、

また大波の日々を通して、

「怪獣母さん」が小さな頃は、

病気がちで学校に行けなかったこと。

その後、不登校になったこと。

カッとなると、なかなかコントロールがきかなくて

本当は今でも困っていること。

「だまれ!このくそじじい!」

と言い放って職員室を出て行ったのも、

そのままそこにいると、

相手に手を出してしまうかもしれない

「怪獣母さん」なりの対応策だったことも分かってきました。

忘れ物をさせたくないけど、

学校のプリントに書いてあることが

よく分からないことも分かってきました。

沢山の生き辛さを抱えながら、

なかなか思うようにならない「怪獣母さん」の子育て…

「カッとなったら、深呼吸してみる?

少し離れてみる?

気分が変わる面白いこと思い浮かべてみる?」

「プリントは、大事なところに

マーカー塗るからそこだけ読む?それだと分かる?」

と、「怪獣母さん」と一緒に何ができるかを

少しずつ考えていきました。

R君が、小学校2年生の時に

家出をしたことがあることも分かりました。

お家がR君にとって安心な居場所になるには、

「怪獣母さん」の学校への不信感が

解消されることからかなと考えたわたしは

R君にとってお家がいい環境に

少しでもなったらといいなと

心の底から思っていたので

「怪獣母さん」にこつこつ対応しました。

そうしているうちに、

「先生、わたしも頑張っているよね。

 わたしにも『花丸』の通知表つくってよ」

と「怪獣母さん」に言われるようになりました。

 

半年経ったある日のことです…

「怪獣母さん」からの電話が鳴りました。

「怪獣母さん」からの電話は、受話器をとると、

ガーッとまくし立てる話し方が特徴的でしたが、

「先生、お忙しいところすみません。

今、お時間いいですか」

と、「怪獣母さん」が丁寧な言葉で言ったのです。

相談の内容は、

「できないことがやっぱり多いけど、

できないと言うと周りに叱られそうで嫌だ。」

というものでした。

そこで、わたしは、

「あはははは~~自分も『できない』ことばかりです。

『できないからダメ』と言って叱ったら、

自分を否定することになります。

だから『できないからダメ』って叱りませんよ。」

と、お話ししたら、

「先生、ありがとうございました」

という言葉で終わりました。

家庭訪問で「ばっかやろ~てめえ」

という言葉を聞くことからスタートして約半年…

ついに「いいこと魔法」がきいたのです!…

受話器を置いて、嬉しくなったわたしは

「『怪獣母さん』から、

『お忙しいところすみません』とか、

『ありがとうございます』という美しい日本語を聞きました!」

と、大喜びしていたら、

パワフル先生からすかさず、

「教師たるもの親に向かって

『出来ない事がある』なんて言って!

先生の権威を落とすような発言は慎みなさい!」

と、叱られました。えっ!そこ?…チーン

~・~・~・~・~・~・~・~

「怪獣母さん」との後日談です。

1年が過ぎ、

R君の担任最後の日の近づいてきた頃のことです。

学校に現れた「怪獣母さん」から、

「先生に出会って、

 子どもと楽しい時間がもてるようになりました。

 わたしの人生が変わりました。

 先生、本当にありがとうございます」

と伝えられたのです。

「怪獣母さん」は、わたしから

懸命に学ぼうとしたお母さんでした。

そして、わたしにとっても、

「怪獣母さん」との日々を通して

分かったことや身につけたことがありました。

 

朝7:30頃、学校の駐車場に車をとめて、

玄関に向かって歩いていると、

わたしの姿を見つけて

「先生、おはようございます~~」

と、隣接する団地のベランダから

身を乗り出して大きな声で挨拶をし

大きく手を振っていた「怪獣母さん」の笑顔…

今のわたしを創っている

かけがえのない存在です。

 

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