天才のたね

子ども達一人ひとりに必ずある「天才のたね」の発芽条件

学級崩壊を3年生で経験し
「やりたくない」「面倒くさい」「どうせ無理」
と、口々に言う子ども達に出逢い、
一緒に再生に向かって過ごした日々の体験と学び、
その中で子ども達のいのちの輝きに触れたことから、

でこぼこでも真っ直ぐじゃなくても
前に前にと進む力が子どもにはある

そして、子ども達一人ひとりに
「天才のたね」が必ずある

ということが、もっともっと
心の底から信じられるようになりました。

もうそろそろ解禁しちゃってもいいかなと思い書きます。

学級崩壊をした時の担任の先生の専門は数学でした。
私の3倍以上の現場経験があり、人当たりもよくて、
その先生の知識も経験もずっと私より豊富でした。
私といえば、遠足で道に迷って人に聞いたぐらい方向音痴で
実は日本地図も正確に把握できてないのに社会科です。
つまり、その先生の知識と経験は明らかに
私よりもずっとずっと優れています。

4月に、1人1人の子ども達について引き継ぎをしました。
すると、その先生から子どもが「なぜできないか」の
原因ばかりが話しにでてきました。
この点がすごく気になりました。
周りの先生達もとても熱心で子ども想いの方々でした。
だけど、不安感に巻き込まれているからか、
職員室で聞こえてくる会話が、
やっぱり「なぜできないか」の原因を話す事が多いのが気になりました。

すると、4月に出逢った子ども達は、
「面倒くさいし」「無理だし」「出来ないし」が口癖で、
4月最初の算数の思考(文章問題)の平均点は70点ありませんでした。
「なぜできないか」の原因探しに周りの大人が長けていると、
子どもは、ちゃんと「できない」子どもになるのだと気づきました。

私は、

でこぼこでも真っ直ぐじゃなくても
前に前に進む力が子どもにはある

必ず1つは「天才のたね」がある

と、ずっと信じてきたし、その時も信じられたから、
何ができるだろうと考え、いろんな人達に相談し
できることをやってみました。
アドラー心理学や選択理論、コーチングを学び、
あと飲み屋で隣になった
会社経営者のおじちゃん達の話しがすごく参考になりました。

授業中の子ども達の様子が少しずつ変わりました。
算数の時間にクラスの子ども達それぞれが、
自分は何が出来て、何が出来ていないのかを自覚して、
友達は何が得意で、何が苦手なのかを分かっていて、
それぞれが得意なことは手伝って、
苦手なことは聞くようになり、
子ども達同士で、
補い合い支え合いが出来るようになっていました。

私は、子ども達の姿から、
得意なことは人に貢献できて、それが人の喜びになるし、
苦手なことは得意な人の居場所を創るから、
どちらも大切な存在で、必要なんだと気づきました。
そして、特に
苦手なことを「助けて」「困っている」と伝えることは、
優しさを広げることにもなって、
とても大切なことなのだと知りました。

4月、5月と、「面倒くさいし」「無理だし」「出来ないし」
と言っていた子ども達が、少しずつやる気になって、
分かった子が分からない子を教え始めて、
3学期には、面白そうだからやってみよう!ということで、
子どもが先生役となり授業をするようになりました。
その時私は、席に座って、子ども役・いいね役・笑い役でした。
子ども達が黒板に書く役、当てる役、先生役の3人で行う授業は
とても楽しくて、笑いが絶えませんでした。

3年生の頃に、その子らしい表現をずっと大人に抑えつけられて、
授業を飛び出しブランコの横で地蔵の様に固まっていた子が、
先生役となって友達に算数を教えることもありました。
暴言を吐いて飛び出し、授業をストップさせていた子が、
1年後には先生役で算数の授業をしているのですから、
彼の成長はかなりのものだと大喜びで職員室で話したら、
地蔵の様に固まっていた彼の寄り添い係だった校長先生に、
「授業は先生がやりなさい」と叱られました。

振り返ると、先生をしている時によく先生に叱られていたなぁ~
だから、叱られて嫌気がさす子どもの気持ち、
本当によく分かります。

子どもが先生役をしていた算数の授業…
3学期の終わりには、
4月の最初70点に満たなかった算数の思考の平均点が92点になっていました。

実は私は、目の前の子ども達が本当に素晴らしいのに、
なぜ92点なんだとすごく疑問で、
授業中理解しているのにその後忘れてしまう、
定着率の低い子どもの分析までやっていました。
(このあたりはかなりしつこい)
すると、原因は睡眠不足と食事でした。
生活習慣の大切さを痛感したので、翌年は毎日、
「早寝・早起き・朝ごはん」を宿題にしました。

1年を通して子ども達は大きく変化しました。
そして、1番変化したのは、
目には見えないけど、とても大切なもの…
子ども達の心、自己肯定感でした。

生活困窮家庭や家庭崩壊、外国籍や発達障がい…
様々な背景から不安感の高い子ども達が、
まず安心することが大切だという、
学級崩壊から再生した子ども達との日々からの学びを、
「温かな関係性」という形で、翌年学校全体に共有化し、
それが結果として、
学校全体の自己肯定感を向上させる実践となって花開きました。

安心感の中で子ども達が勇気を出せるようになると、
私が口をはさまなくても、手を出さなくても、
子ども達同士で天才のたねを発芽させていく瞬間と感動

ああ、この子にこんな一面があったのか
ああ、この子はこんなことができたのか

子ども達のいのちが輝く瞬間は、
何とも言えない驚きと喜びをもたらし、
私は、子ども達のいのちの輝きに夢中でした。

子ども達が5年生の3学期、
私はバスケットクラブの顧問となり、
小さな学校だったので、
その時のメンバーはたった8人でした。

それまでのバスケットクラブの顧問の先生は、
とても頭のよい方で、指導力も抜群でした。
ビシッと戦略を立て、その戦略のもとに、
子ども達の動きを先生が緻密に決めていく方法をとっていました。
そして、レギュラーはスポーツテストの結果、
身体的能力に優れている賞を受賞した子どもが、
5人中3名もいるピカピカチームでした。
だけど、試合で勝てませんでした。
この結果から、頭のよい大人が緻密に子どもの行動を決めていく方法は、
かえって子どもの能力を阻害するかもしれないと感じました。

顧問になった頃の私は、
子どものもつ力はすごい!
と、もっともっと信じるようになっていました。
中学校で全国大会に出たことのある先生から
教えてもらった戦略を2つ、おおざっぱに図に描いて子ども達に伝えました。
バスケットのコーチをしている方が、
「小学校で変な癖がつくのが困る」
と言っていたので、指導法のDVDを見たまんま、
ボール回しやドリブルなどの基本的なスキルを教え、
ポジションによって必要なスキルを箇条書きでかいたリストを作成しました。
つまり、必要な基本的スキルと戦略の情報提供はしました。
そして、子ども達の動作を細かく指示することはやめて、
子ども達が相談しながら練習を工夫しました。
私が退職した後、2年目の先生(バスケットの経験全くなし)が顧問となり、
子ども達はそのままこの練習方法を続けて、
その年、優勝しました。
これは、小さな学校史上初の快挙でした。

優勝できたのは、算数の授業と同じ様に、
何が出来て、何が出来ていないかを自覚し、
友達は何が得意で、何が苦手なのかを分かって、
仲間同士で話し合い、
聴き合うことの大切さを子ども達が理解し、
工夫を重ねて練習したからだと思います。
試合本番の動きをイメージして、
リバウンドは得意だけど、
集中すると周りが見えなくなる子に声をかけてフォローにまわる。
ドリブルは得意だけど
背が低いからシュートでカットされる子からパスをもらう
子ども達はお互いのことを先生以上によくわかっていて
できることを見つけて練習するプロセスは、
私が見ていても本当にお見事でした。

「できることを見つけてやる」力は、
私が出逢ってきた経営者や物事を成す人が身につけている力で、
バスケットを通して子ども達は体験的に学ぶよい機会となりました。
その意味でも、大人が子どもに、
「あれしろ、これしろ」「あれするな、これするな」と
細かく指示をしない方が子どもが成長すると思います。
子どもが「やりたい」ことをやって成長するのが自然だからです。

子ども達の成長を年表にまとめると、
1年生でちょっと学級崩壊
2年生で持ち直す
3年生で学級崩壊
4年生で再生
5年生で若手の先生が担任
野外活動では、掃除をする子ども達の姿に
キャンプ場の方が
「こんなに一生懸命に掃除をする子ども達は初めてだ」
と絶賛し、若手の先生が大いに誇らしい気分
6年生でバスケット優勝

教師3年目の先生と教師2年目の先生は、
子ども達のおかげで教師としての喜びを、
味わい自信をもつことができ、
すっかり先生を上手に成長させる、
子ども集団になっていました。

私にとっても成長がありました。
私には、ブラジル留学や通訳の経験があるので、
多様性には十分に寛容だと思っていたところ、
気づいていなかった思い込みを、
子ども達によってぶち破られ、お陰様で、
もっと多様性を受け入れられるようになりました。
私の心が多様性を受け入れると、
クラスの中に排除がなくなり、
子ども達の安心感が高まります。

「いい・悪い」で判断する前に、
子ども達の多様な気持ちや行動を否定せずに、
まず「ある」ものとして受け入れると、
そこが子どもにとって安心の居場所となり、
子どもも大人も共に成長する場になるように思えます。
これは、家庭の親子関係でもいえることだと思います。

繰り返しますが

でこぼこでも真っ直ぐじゃなくても
子どもには前に前にと進む力がある

そして
子とも達一人ひとりに「天才のたね」がある。

ということが、私は、心の底から信じられます。
だからこそ、「天才のたね」の発芽条件はすごくシンプル
・安心な居場所
・信じて見守る人
・安全な食

以上の3つ♡

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photo by Emmy

ABOUT ME
ペンギン先生
ペンギン先生 愛知県在住。元小学校教員。 学級崩壊のクラスを受け持ち、「面倒くさいし」「やりたくないし」「出来ないし」という子ども集団を目の前にして、「何とかしたい」「道を拓きたい」と懸命に試みていたあの頃の私を思い出しながら書いています。 自己肯定感の低い子ども達や家族の心の闇に直面し、「子ども達一人ひとりに、必ず1つは『天才のたね』がある!」「温かな家族のようなクラスにしたい!」という想いを心の灯火に、試行錯誤しながらも課題に1つ1つ取り組み、全国平均76%よりも低かった子ども達の自己肯定感が担任していたクラスでは97%へと向上しました。 このブログを通じて、子供達の可能性を信じる気持ちが波紋のように大人たちに広がることを願っています。

POSTED COMMENT

  1. 大内 洋子 より:

    先日、智ちゃん、くればやしさんの子育て講座で少しお話しさせてもらったものです☺
    映画の申し込みも

    映画の主催もすごいと思いましたが、このブログ最高です!
    また時間のあるときに他のページも読みにいきます❤

    FBの友達申請もさせていただきたいです。

    いやぁ、感動です。嬉しい気持ちが今一杯です☺
    ありがとうございます。

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