「飛び出し君」の処方箋

①「飛び出し君」が転校してくると初めてきいた日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教務先生の様子から、かなりの「大物」だと感じました。

 

②「飛び出し君」が在籍する学校に連絡した日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分間にわたり「飛び出し君」の様々な問題行動を聞き、

上手くいった手立てについては1つも聞けなかったため、

当時、多忙を極めていた私は、「行かないこと」を選択しました。

 

③転校予定日の1週間前、初めての出逢いの日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今でもありありと覚えているこの時の彼の様子

校長室のソファーにあぐらをかき、ねそべり、

何よりもトゲトゲエネルギー炸裂!

 

④ その時の私…アラーム炸裂!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼から発するトゲトゲエネルギーに、パニックになりました。

トゲトゲエネルギーは苦手です。

ただ、「瞑想」なども体得していたので、

まずは深呼吸をして、心を落ち着かせ、

それから何をしたらいいのかを考えました。

「心が落ち着いた状態で考える。」

これは、学級崩壊のクラスを立て直した時に得た智慧の1つです。

深い呼吸をすると、副交感神経が優位となりリラックスします。

その時に考える方が、よい考えが浮かびます。

 

⑤3つのアクション決定

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

週に2時間しか教室に居ないという「飛び出し君」です。

1人で抱え込むのではなく、学校全体の協力が必要でした。

頭を下げて、対策をお願いしました。

① 学校全体

「飛び出し君」が教室から出て行った際にも

クラスの子ども達の授業が続けられるように、

最初は複数対応での体制をお願いしました。

□支援員さんの補強

□管理職の先生の見回り

② 「飛び出し君」の居場所づくりと子ども達の安全

学校現場では、大切な価値観がぶつかる時があります。

どちらをどれだけ優先するか本当に悩み考えます。

「飛び出し君」の居場所づくりも大切ですが、

周りの子ども達の安全も大切です。

周りの子ども達の安全を第1、

「飛び出し君」の居場所づくりを第2と心の中で決めました。

③ 「飛び出し君」の居場所づくりプログラム

「飛び出し君」には友だちや教師に対する暴力・暴言があるとのことでした。

一方で、

彼には新しい学校で「友だちがほしい」「変わりたい」という気持ちがありました。

彼と話し合って、子ども達の安全を1番大切にしていることを伝え、

それを基準にまず、「人への暴力をしない」を1番最初の目標にしました。

その後、物を投げない、授業中暴言を言って妨害しないなど、

順番に取り組むことを決めていきました。

宿題や持ち物など個人に関することは、

様子を見て少しずつ目標にいれていきます。

 

⑥ 「飛び出し君」理解には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何を根拠に、「飛び出し君」の不適切な行動に取り組んでいくか、

その時に大いに参考にしたのは、アドラー心理学です。

問題行動の原因を探っても、

多くの場合、過去に遡って家庭環境に原因を求めることになり、

それでは、学校の中でできる解決方法から遠ざかるばかりです。

その点、アドラー心理学の「適切な行動」に目を向ける、

「原因」ではなく「目的」を考えるという方法は、

学級崩壊のクラスの立て直しや「飛び出し君」対策に非常に有効でした。

 

⑦ 子どもの基本的な欲求を知る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子どもが暴れるなどの不適切な行動をしたら、

「何のために(何が目的で)暴れているのか」と考えます。

例えば、「周りから注目を浴びたいのかもしれない」と仮説を立て、

本人との会話の中で、確かに「注目を浴びたい」という欲求があるなら、

「指揮者」などの役割を与えて、

暴れて注目を浴びるという不適切な行動から、

「指揮者」をすることで学習に参加するという

集団の中での適切な行動を促すという方法です。

この方法で、彼は転校1ヶ月後に開催された学習発表会に参加することができました。

転校前の学校では、学習発表会時に暴れて友だちの作品を壊したそうです(本人談)

 

⑧子どもの欲求が満たされない時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛び出し君」の場合、転校時には学習に対しては無気力、

教師に対しては復讐する(教師や友だちにけがをさせる、物を壊す)レベルにありました。

それだけずっと、近くの大人から力で押さえ込まれてきた、

心が傷だらけの「飛び出し君」でした。

周りの大人から充分な注目・関心を浴びることのなかった子どもは、

いたずらや目立つ行動をして、居場所を確保しようとします。

この時に、大人はイライラとした気持ちになります。

このイライラした気持ちで、注意をしたり叱ったりすると関係が悪化し、

子どもは、大人に対して反抗的な態度(暴言)をとるようになります。

それに腹を立てた大人が更に力で押さえ込もうとすると、

子どもは、物を壊したり、友だちや大人を傷つけたりする行動をとり、

最後は無気力となる。というのが、アドラーの不適切な4つの行動です。

この行動を逆から順に巻き戻しをしていくことに取り組みました。

「飛び出し君」は学習に対しては無気力なのですから、

学習時に何か反応があったら、1つ成長の階段を上ったことになります。

たとえ、それが「うるせ~ばばあ」という言葉でもです。

 

⑨ イライラしても、イライラ返しをしない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛び出し君」にとって、大人は怖い存在、ストレスのもとです。

ストレスを感じると、脳は身体を守るために「闘争・逃走」反応をおこします。

つまり、「怖い」と感じたら、「戦うか」「逃げるか」です。

だからこそ、「飛び出し君」にとって、安心感を与える関わり方がとても大切になります。

転校した日に、早速、飛び出した彼と手をつなぎ、

職員室に行って一人ひとりを紹介していったのは、

安心感を感じてもらうための第1歩でした。

逆に、「飛び出し君」を大声で叱ったり力で押さえつけようとしたりしたら、

「飛び出し君」との関係性は築けませんし、

「飛び出し君」に必要な意志の力は育まれません。

意志の力は安心感があるからこそ、育まれるのです。

 

⑩ イライラ返しとは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大変な「トゲトゲエネルギー」を発する「飛び出し君」に近づくと、

嫌な感じがするので、教師はイライラとします。

そのイライラのまま、叱ったり注意したりしても、

イライラエネルギーを返しているだけで、

「飛び出し君」の行動は直りませんし、

関係性は悪くなります。

ですから、イライラとした時には「深呼吸」をして、

心を落ち着けてイライラに反応しないことをとても意識しました。

心が落ち着くとよりよい対応ができるようになります。

「飛び出し君」に適切な行動を促すのは根気のいる仕事です。

500回同じ事を繰り返し淡々と言うイメージです。

教師がやれば、子ども達が協力してくれます。

 

⑪ 適切な行動をしたこと・不適切な行動をしなかったことの承認

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学級崩壊のクラスを立て直した時に、最も有効だった手立ての1つは、

目立たない小さな適切な行動を承認していく方法でした。

この目立たない小さな適切な行動を承認する方法ができる教師は少ないです。

目立たない小さな適切な行動とは、

例えば、授業中教科書を開く、ノートを書くなどです。

「当たり前」と言われることを、「できたね」と静かに承認することで、

崩壊したクラスの秩序が戻っていきました。

この方法を、「飛び出し君」にも行いました。

 

⑫「適切な」行動を認めるとは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

算数の授業に教科書を開く…

これは、「当たり前のこと」の1つだと捉えがちですが、

そうではありません。

不適切な行動4つの目標のレベル4と3からスタートした、

「飛び出し君」の目標は「暴力をしない」

つまり、席に座ったこと、鉛筆をもつこと、教科書を開くこと…

これらは、彼の成長と捉え、静かに「できたね」と承認していきます。

 

⑬やらなかった「不適切な行動」を認める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し高度な承認です。

頭の中に、彼の成長の階段をイメージします。

成長の階段のステップは小さくします。

「うるせ~くそばばあ」という暴言に対しても、

「ババアとは何だ!」と言いたくなる気持ちをぐっと我慢をして、

深呼吸をして、彼の様子を観察し、

以前は物を投げてきて、「うるせ~くそばばあ」だったのが

今回は「うるせ~くそばばあ」だけなら、

暴言に対して指導するのではなく、

物を投げなかったことを承認します。

「ばばあと言われると悲しい気持ちになる、

でも、この間は鉛筆を投げたけど、今回は投げなかったね。」

というような言い方で伝えていました。

 

⑭ 日々のコツコツ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛び出し君」の暴力は、

心の繋がりがない寂しさが根っこにありました。

存在を認め、笑顔を向ける大人が近くにいなかったからです。

寂しさからトゲトゲエネルギーを発し、

そのトゲトゲエネルギーが怖くて、

人が近寄らないという負のスパイラルです。

だから、「飛び出し君」が安心する関わり方を探し、

関わり合いを増やしていきました。

 

⑮「飛び出し君」の心の声を聴いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛び出し君」は感受性豊かな子どもでした。

彼のするお話しを私が笑って聞いていると、

とても喜んで色んなお話しをしてくれました。

なかなか鉛筆をもたなかった彼が鉛筆をもったのは、

私が彼から聞いて喜んだお話しを、

「絵日記にかいてほしい」と言った時でした。

私に、漢字を1つずつ聞きながら、

1枚の絵日記を書き上げました。

普段は小さな弟の世話をやり、

たばこをすう妊娠中のお母さんの身体のことを心配していました。

存在を喜び、笑顔を向ける人が1人いたら、

子どもは変わります

なぜなら、子どもは自分の存在で、

身近な大人が笑顔になることが喜びだからです。

 

選択理論の論文作成のために、

私のクラスの聞き取り調査に入っていた先生から、

「飛び出し君」とわたしの関係性について

「周りのだれ一人信じずに心が頑なに閉じていた彼が、

心開いて先生と繋がっているのを見た時に奇跡だと思った。

1度でも人と繋がることができたことは彼にとって大きなこと」

と言われました。

 

⑮ まとめ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは、子ども心を大切に想う人に向けてこのブログを書きました。

「飛び出し君」のような心の根っこの寂しい子ども達に、

排除や無視、無関心で関わるのではなくて、

温かな関わり合いを大切にする大人が1人でも多く増えますように…

 

「飛び出し君」がお話ししてくれたことは、

飛び出し君の春風」に短くまとめてあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Photo by Emmy

 

 

 

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です